犯罪の実行を教唆したところが、被教唆者みずから実行せずさらに第三者を教唆して実行せしめた場合には、第一の教唆者は、教唆者として責任を負うものである。
被教唆者が自ら犯罪を実行しないで第三者を教唆して犯罪を実行せしめた場合の第一の教唆者の責任
刑法61条
判旨
教唆者が被教唆者に対して犯罪を教唆し、被教唆者が自ら実行せずに第三者を教唆して実行させた場合(間接教唆)であっても、第一の教唆行為と実行行為との間に因果関係が認められる限り、教唆罪が成立する。
問題の所在(論点)
教唆者が被教唆者に教唆し、被教唆者がさらに第三者を教唆して実行させた場合(いわゆる間接教唆)において、最初の教唆行為と最終的な実行行為との間に因果関係を認めることができるか。また、中間に別の教唆行為が介在することが因果関係を遮断するか。
規範
教唆罪(刑法61条1項)が成立するためには、教唆行為と正犯の実行行為との間に因果関係を要する。教唆者が被教唆者を教唆し、さらに被教唆者が第三者を教唆して犯罪を実行させた場合、その犯罪が第一の教唆行為に基因し、当該教唆がなければ犯罪が実行されなかったという関係があるときは、両者の間に因果関係を認めることができる。この場合、中間に第二の教唆行為が介在しても、第一の教唆行為と実行行為との因果関係は中断されない。
重要事実
被告人Aは、Bに対し「工場に火をつけてくれ、焼けたら礼金をやる」と言って放火を教唆した。しかし、Bは自ら放火を実行せず、さらに第三者Cを教唆して放火の実行に至らせた。Aは、自身とCの実行行為との間には因果関係がない、あるいはBの介在により因果関係が中断していると主張して争った。
あてはめ
本件において、犯罪の実行は第一の教唆行為(AからBへの教唆)に基因するものである。もしAによる教唆がなければ、BによるCへの教唆も、Cによる放火の実行も行われなかったという関係が認められる。このように、先行する教唆行為が実行行為の条件となっている以上、両者の間には論理的な因果関係が存在する。たとえその過程でBによる第二の教唆行為が介在したとしても、それによって先行する教唆と結果との結びつきが否定されるわけではないため、因果関係の中断は認められない。
結論
被告人Aには、Bを介してCに放火を行わせた間接教唆が成立する(刑法61条2項、1項)。
実務上の射程
間接教唆の処罰根拠と因果関係の存否を論じる際のリーディングケースである。答案上は、直接の教唆のみならず、再教唆(間接教唆)についても「教唆者を教唆した者」として刑法61条2項により1項と同様に処罰されることを指摘した上で、本判例の論理を用いて実行行為との因果関係を肯定すればよい。
事件番号: 昭和27(あ)4063 / 裁判年月日: 昭和29年4月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀者が共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、犯罪を実行に移した以上、自ら実行行為を分担しなくても共同正犯の責任を負う。この場合、誰が最初に犯行を提議したかや、実行に欠くべからざる行為をしたか、あるいは主謀者であったかといった事情は、共同正犯の成立を左右するものではない。 第1 事案…