控訴審が、指定した公判期日を被告人及び私選弁護人に通知せず同弁護人不出頭のまま審理を終結し、判決宣告期日に有罪判決を言い渡したときは、たとえ国選弁護人を選任して私選弁護人提出の控訴趣意書に基いて弁論したときでも、弁護権の不法制限であり刑訴第四一一条第一号にあたる。
刑訴第四一一条第一号にあたる一事例。
刑訴法411条,刑訴法388条,刑訴法389条
判旨
裁判所が指定した公判期日を弁護人に通知せず、弁護人不在のまま審理を終結して判決を言い渡すことは、弁護権の不法な制限であり、判決に影響を及ぼすべき法令違反に該当する。
問題の所在(論点)
裁判所が弁護人に対し公判期日の通知を行わず、弁護人不在のまま審理を終結させた手続が、弁護権を不当に制限するものとして破棄事由(法令違反)に該当するか。
規範
被告人の防御権、特に弁護人の援助を受ける権利を保障するため、裁判所は指定した公判期日を弁護人に通知しなければならない。この通知を怠り、弁護人が出頭しないまま審理を終結させることは、たとえ国選弁護人を選任して私選弁護人作成の書面に基づき弁論を行わせたとしても、弁護権の不法な制限として、判決に影響を及ぼすべき重大な法令違反(刑事訴訟法411条1号参照)となる。
重要事実
原審は第一回公判期日を指定したが、被告人両名を召喚せず、また私選弁護人に対しても期日の通知を行わなかった。裁判所は、被告人および私選弁護人が不在のまま公判を開廷し、その場で国選弁護人を選任した。国選弁護人は私選弁護人が提出していた控訴趣意書に基づいて弁論を行い、即日弁論が終結された。その後、第二回公判期日にて控訴棄却の有罪判決が言い渡された。
あてはめ
本件では、原審が私選弁護人に期日の通知を欠いたまま公判を強行しており、被告人が選任した弁護人による十分な援助を受ける機会を実質的に奪っている。国選弁護人が私選弁護人の書面を用いて弁論を行った事実はあるものの、正規の通知を経ないまま進められた手続の瑕疵を治癒するものではない。このような手続は弁護権の不法な制限といえ、正義に反する重大な法令違反があると評価される。
結論
原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり、これを破棄しなければ著しく正義に反するため、原判決を破棄し差戻すべきである。
実務上の射程
公判期日の通知漏れという手続的瑕疵が、弁護権侵害として直ちに破棄事由になり得ることを示した。被告人の防御権の核心である「弁護人の援助を受ける権利」の重要性を強調しており、職権破棄の対象となる「重大な法令違反」を検討する際の有力な指標となる。
事件番号: 昭和26(れ)2197 / 裁判年月日: 昭和26年12月21日 / 結論: 棄却
公判開廷直前に被告人の私選した弁護人が辞任した場合、裁判所が弁護人なくして同期日に審理結審しても、被告人において弁護人選任のため公判期日の延期、変更の申請をせず、しかも裁判所も被告人の弁護人選任を妨げた事跡がないときは、憲法第三七条第三項に違反しない。
事件番号: 昭和31(あ)3848 / 裁判年月日: 昭和32年6月19日 / 結論: 棄却
控訴審が被告人から貧困を理由に国選弁護人選任の請求があつたのにその選任を遅延し、控訴趣意書差出最終日を経過した後に至り国選弁護人を選任した場合において、改めて同弁護人に対し控訴趣意書を提出する機会を与える措置をとらなかつたとしても、同弁護人において自ら控訴趣意書を提出するため右最終日の変更方その他格別の請求をすることな…