第一審が被告人を判示第一の事実につき罰金八万円、第二の事実につき罰金五千円に処し、右罰金を完納することができないときは金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべき旨の判決をし、これに対して被告人より控訴のあつた場合、控訴審が右第一審判決を破棄し、被告人を原判示第一の事実につき罰金五万円、第二の事実につき罰金五千円に処し、右罰金を完納することができないときは金三百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべき旨の判決をしたとしても、刑が被告人に重く変更されたものということはできない。
刑訴第四〇二条に違反しない一事例
刑訴法402条
判旨
不利益変更禁止の原則における「重い刑」の判断は、刑を総体的に考察して決定すべきであり、罰金額が減額されたのであれば、換刑処分による労役場留置期間が延長されたとしても、刑が重く変更されたとはいえない。
問題の所在(論点)
罰金額を減額する一方で、換刑処分の1日当たりの金額を引き下げた結果、労役場留置期間が延長された場合、刑訴法402条が禁ずる「被告人が控訴をした事件について、原判決の刑より重い刑を言い渡すこと」に該当するか。
規範
刑訴法402条(不利益変更禁止の原則)にいう「重い刑」にあたるか否かは、個別の処分内容を切り離して比較するのではなく、主刑および付随する処分の性質、量、効果等を対照し、刑を総体的に考察して、被告人の不利益になるか否かを判断すべきである。
重要事実
被告人が控訴した事件において、第一審判決は罰金合計8万5000円(換刑処分は500円を1日)を言い渡した。これに対し、原判決(控訴審)は、罰金合計を5万5000円に減額したが、換刑処分を300円を1日とした。その結果、罰金額は減少したものの、計算上の労役場留置期間は170日から183日へと13日間延長されることとなった。被告人側は、これが不利益変更にあたると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は主刑である罰金の総額を約3分の1強(8万5000円から5万5000円へ)減額している。換刑処分は罰金を完納できない場合の結果的・補充的な処分であり、刑の本体は罰金そのものである。これらを総体的に考察すれば、換刑処分に基づく労役場留置期間が13日余延長されたとしても、主刑である罰金額が大幅に減額されている以上、全体として刑が被告人に重く変更されたとは認められない。
結論
原判決は、主刑を総体において減額したものであるから、不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)には違反しない。
実務上の射程
主刑の種類が同一(罰金刑同士)である場合、一部の付随的処分が不利益になっても、主刑の総体が軽減されていれば不利益変更にあたらないとする。答案上では、刑の種類や量の比較において「総体的な考察」というキーワードを用いて判断枠組みを示す際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和27(あ)5889 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人にとって過重に感じられる刑罰であっても、それが直ちに憲法36条の禁止する「残虐な刑罰」に該当するわけではない。 第1 事案の概要:被告人は、原判決の量刑が不当に重いことを理由に、これが憲法36条の「残虐な刑罰」に該当し違憲であると主張して上告を申し立てた。本件の具体的な犯行事実や原審の刑種・…