第一審が被告人を判示第一の事実につき罰金一万二千円に、第二の事実につき罰金一万五千円に処し、右罰金を完納することができないときは金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべき旨の判決を言い渡し、これに対して被告人より控訴の申立があつた場合、控訴審が右第一審判決を破棄し、被告人を原判示第一および第二の事実につき各罰金一万円に処し、右罰金を完納することができないときは金二百五十円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべき旨の判決を言い渡したときは、刑が被告人に重く変更されたものといわなければならない。
刑訴法第四〇二条に違反する事例。
刑訴法402条,刑法18条
判旨
不利益変更禁止の原則における刑の軽重の比較は、形式的にのみ判断せず、罰金額の多寡と換刑処分としての労役場留置期間の長短とを総合的かつ実質的に考察して判断すべきである。
問題の所在(論点)
被告人のみが控訴した事件において、罰金額を減らした一方で労役場留置期間を延長することが、刑事訴訟法402条の不利益変更禁止の原則に抵触するか。また、その軽重をいかに判断すべきか。
規範
刑事訴訟法402条が定める不利益変更禁止の原則に関し、第一審判決と控訴審判決の刑の軽重を比較するにあたっては、形式的な判断にとどまらず、全体的考察の下に実質的・具体的に判断すべきである。特に罰金刑の場合、罰金額のみならず、不完納の場合の換刑処分(刑法18条)としての労役場留置期間の長短を併せて考慮しなければならない。
重要事実
被告人は酒税法違反(無免許製造)の罪に問われた。第一審は、罰金合計2万7000円、労役場留置の換算を1日500円(留置期間54日相当)とする判決を言い渡した。これに対し被告人のみが控訴したところ、原審(控訴審)は、罰金額を合計2万円に減額したが、換算を1日250円に下げたため、労役場留置期間が80日に延長される結果となった。
あてはめ
本件では、原判決により罰金額が2万7000円から2万円へと7000円減じられている。しかし、他方で換刑処分の換算額が低くなったことで、労役場留置期間は54日から80日へと約1.5倍に延長されている。これを実質的に考察すると、金銭的負担の減少以上に身分的な拘束期間の延長による不利益が大きく、全体として第一審判決よりも重い刑を科したものといえる。したがって、刑を軽くすべきとした理由と結論が矛盾し、かつ不利益に変更していると判断される。
結論
罰金額の減少にかかわらず、労役場留置期間を延長した原判決は、実質的に第一審判決より重い刑を科したものであり、刑事訴訟法402条に違反する。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則の適用場面において、主刑の種類が同一であっても、付随的な処分や執行に影響する換算規定等の変更により実質的な不利益が生じる場合には同条違反となり得る。答案では「実質的・具体的比較」の視点を示す際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1238 / 裁判年月日: 昭和26年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が単なる法令違反にとどまる場合であっても、量刑が法定刑の範囲内であり、一罪に対する刑として不当に重いといえないときには、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。 第1 事案の概要:被告人は酒密造の罪に問われ、第一審において懲役1年(執行猶予3年)及び罰金2万円の判決を受け…