一 被告人の容貌体格は、被告人と犯人の同一性を証明するための証拠とすることできる。 二 公判廷で被告人の容貌体格を取り調べるのは検証の性質を有するが、特段の方法を用いる必要がなくかつ被告人に証拠の証明力を争う機会が与えられていたような場合には、特段の証拠調手続を履践する必要がない。
一 被告人の容貌体格を証拠とすることができるか 二 公判廷における右証拠の取調方法
刑訴法306条,刑訴法128条,刑訴法308条,刑訴規則44条1項23号
判旨
被告人の容貌体格を犯人との同一性確認の資料とする場合、公判廷で裁判官が特段の方法を用いずに当然に認知でき、当事者もこれを知り得る状況にあれば、原則として特段の証拠調手続(検証等)を履践する必要はない。ただし、被告人側に証明力を争う十分な機会が与えられていない特段の事情がある場合には、別途検証手続を行う必要がある。
問題の所在(論点)
公判廷における被告人の容貌体格を犯人との同一性判断の資料とする際、検証(刑訴法128条等)等の厳格な証拠調べ手続を履践する必要があるか。
規範
被告人の容貌体格の認知は、性質上は検証に属するが、裁判官が公判廷で自然に視認でき、当事者もその内容を認識し得る場合には、原則として証拠物の取調や検証としての特段の手続を要しない。もっとも、被告人側に当該事実の証明力を争う機会が保障されていない場合には、適正運用の観点から別途検証手続を要する。
重要事実
被告人と犯人の同一性が争点となった事案において、裁判所は公判廷における被告人の容貌体格を犯人と比較し、同一性を確認するための資料とした。これに対し、弁護側は、公判廷における被告人の容貌体格を証拠とするには、刑事訴訟法上の検証の手続を経るべきであるとして、手続の違法を主張した。
あてはめ
本件では、被告人と犯人の同一性が法廷で争われており、被告人の容貌体格が争点の一つとなっていた。被告人及び弁護人は、この点について新証拠の提出や証人への反対尋問を行うなど、証明力を争う十分な機会を与えられていたといえる。したがって、裁判官が公判廷で当然に視認し得る容貌等を特段の手続なしに証拠資料としても、被告人の防御権を侵害するものではなく、違法とは認められない。
結論
公判廷における被告人の容貌体格を証拠資料とするにあたり、当事者に争う機会が十分に与えられている以上、別途検証等の証拠調べ手続を履践しなかったとしても違法ではない。
実務上の射程
裁判官が法廷で直接知覚できる事実(いわゆる「法廷の状況」)を事実認定の資料とする際の限界を示した判例である。答案上は、厳格な証明の対象であっても、裁判官が五官の作用により直接認知でき、かつ当事者の防御権(反証・弾劾の機会)が実質的に保障されている場合には、独立した証拠調べ手続を略し得ると論じる際に活用する。
事件番号: 昭和36(あ)55 / 裁判年月日: 昭和36年12月27日 / 結論: 棄却
いわゆるすり替輸出の方法により甲物品に代えて乙物品を船積輸出する目的であるため、甲物品については当初からこれを真実船積輸出する意思がない場合でも、甲物品を保税上屋に搬入し税関から輸出の許可を得た以上、これを船積しないで保税上屋から引き取ることは、関税法第二条第一号にいう「輸入」にあたる。
事件番号: 昭和26(あ)2526 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
一 被告人が公判廷において知情の点を除いて幇助の事実を供述する等その防禦に実質的な不利益を及ぼす虞のない場合には、正犯の訴因の変更をさせないでこれを幇助に認定することができる。 二 物品の密輸入をしようとした貿易等臨時措置令違反の事実とその物品の関税の逋脱を図つた関税法違反の事実とは、その公訴事実を異にする。