一 住民を保護し取締る目的から新たに一定の場所に住居を定めたものに対し、その旨を届出若しくは、登録をなすべきことを命じ、これに違反するときは制裁を科する旨の規定を設けたからといつて、それは、居所若しくは住所を定めること自体を制限するものでもなく、又居所若しくは住所の移転自体を制限するものでもないから、かかる規定は、憲法二二条1項に違反し居住、移転の自由を侵害するものであると言うことはできない。 二 外国人登録令(昭和二四年一二月三日政令三八一号による改正前のもの、以下同じ)が同令の適用については、当分の間、朝鮮人を外国人とみなし、戦時中より日本内地に存在する朝鮮人に対し、居住地の市町村の長に対し、所要の事項の登録を命じ、これに違反して登録の申請をなさず又は虚偽の申請をなしたときは、処罰する旨規定したからといつて、憲法二二条一項に違反することはない。
一 住民の登録義務と居住移転の自由 二 外国人の登録義務と居住移転の自由
憲法22条1項,外国人登録令,外国人登録令(昭和24年12月3日政令381号による改正前のもの)4条,外国人登録令(昭和24年12月3日政令381号による改正前のもの)12条2号,外国人登録令(昭和24年12月3日政令381号による改正前のもの)附則2項,外国人登録令(昭和24年12月3日政令381号による改正前のもの)附則3項
判旨
憲法22条1項の居住・移転の自由は絶対的ではなく公共の福祉による制限を受ける。外国人登録令に基づく登録義務及び違反に対する制裁は、居住・移転そのものを制限するものではなく同条に違反しない。
問題の所在(論点)
住民保護や取締りの目的で、一定の場所に住居を定めた者に対し登録・届出義務を課し、違反者に制裁を科す規定が、憲法22条1項の居住・移転の自由を侵害し違憲となるか。
規範
憲法22条1項が保障する居住・移転の自由は、日本国内において自ら欲する地に住所・居所を定め、又はこれを他に移すことを妨げられない自由を意味する。もっとも、同権利は絶対的なものではなく、公共の福祉との比較権衡上、制限を受ける場合がある。居住・移転の自由を侵害するか否かは、当該規定が居住・移転の自由そのものを直接的に制限する性質のものであるかによって判断される。
事件番号: 昭和28(あ)4056 / 裁判年月日: 昭和28年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】外国人に対し居住地の市町村長への登録を義務付け、違反を処罰する外国人登録令の規定は、憲法22条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は朝鮮籍の外国人であり、外国人登録令に基づき居住地の市町村長に対して所要事項の登録を行う義務を負っていたが、これに違反して登録申請を行わず、または外国人登録証明…
重要事実
被告人は、当時の外国人登録令に基づき、外国人とみなされていた朝鮮人である。同令は、戦時中より日本に在住する朝鮮人に対し、居住地の市町村長に対して所要事項の登録を申請することを義務付け、これに違反した場合に刑罰を科す旨を規定していた。被告人は、当該登録申請をなさなかった等の理由により、同令違反として起訴され、第一審及び原審で有罪判決を受けた。これに対し、被告人側は同令が憲法22条1項に違反するとして上告した。
あてはめ
外国人登録令の規定は、住民を保護し取締る目的から、新たに一定の場所に住居を定めた者に対し、その旨の届出・登録を命じるものである。これは、特定の場所に住所や居所を定めること自体を禁じるものではなく、また、一度定めた住所等を他へ移転させる行為そのものを制限するものでもない。したがって、登録義務を課し違反に制裁を設けたとしても、憲法が保障する居住・移転の自由そのものを制約するものとはいえない。
結論
外国人登録令(4条、12条2号、附則2項・3項)は、憲法22条1項に違反しない。したがって、同令を適用して被告人を処断した原判決に違憲の点はない。
実務上の射程
本判決は、居住・移転の自由に対する制約が「直接的」なもの(住む場所や移転そのものの禁止)でない場合、憲法22条1項違反を否定しやすい傾向を示している。答案上は、届出義務や事後的な報告義務が直ちに居住・移転の自由を侵害するものではないという論法として活用できるが、現代のプライバシー権や個人情報保護の観点、あるいは過度な制裁による事実上の移転抑制効果が生じる場合には、別途検討が必要である。
事件番号: 昭和42(あ)94 / 裁判年月日: 昭和42年6月9日 / 結論: 棄却
居住地変更の登録を怠つた者を処罰する外国人登録法第八条第一項、第一八条第一項第一号の規定が憲法第二二条第一項に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判決(昭和二五年(あ)第五八六号同二八年五月六日宣告、刑集七巻五号九三二頁)の趣旨に徴し明らかである。
事件番号: 昭和25(あ)2455 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】外国人登録令の適用において、朝鮮人は、同令11条に基づき、当分の間、外国人とみなされる。 第1 事案の概要:被告人が、自らを日本人であると主張し、外国人登録令の適用を受ける朝鮮人ではないと争った事案である。第一審および原審は、諸般の事情を詳細に説示・検討した結果、被告人を朝鮮人と認定した。これに対…
事件番号: 昭和27(あ)5164 / 裁判年月日: 昭和29年4月16日 / 結論: 棄却
外国人の登録証明書不携帯の罪を処罰する外国人登録令第一三条第五号の規定は、憲法第二二条第一項に違反しない。