証拠書類と書面の意義が証拠となる証拠物とは、その書面の内容のみが証拠となるか又は書面そのものの存在又は状態等が証拠となるかによつて区別される。
証拠書類と書面の意義が証拠となる証拠物との区別
刑訴法305条,刑訴法306条,刑訴法307条
判旨
証拠書類(刑訴法305条)と証拠物たる書面(同306条等)の区別は、書面の内容が証拠となるか、あるいは書面自体の存在や状態等が証拠となるかによって決まる。供述内容を証明する目的の司法警察員作成の供述調書は、証拠書類として扱うのが相当である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上、証拠書類(305条)と証拠物たる書面(306条)はどのように区別されるか。また、司法警察員が作成した被告人の供述調書を証拠とする際、いずれの方法で証拠調べを行うべきか。
規範
書面が証拠書類(刑訴法305条)に該当するか、あるいは証拠物たる書面(同306条、307条)に該当するかの区別は、当該書面の作成された人、場所、手続等の形式的属性ではなく、立証の対象によって決まる。すなわち、書面の内容のみが証拠となる場合は「証拠書類」であり、書面そのものの存在、状態等が証拠となる場合(例:虚偽の内容が記載された申告状そのものが罪体となる誣告罪等)は「証拠物たる書面」となる。供述内容の証明を目的とする書面は証拠書類に当たる。
重要事実
被告人の有罪判決において、原判決は司法警察員が作成した被告人に対する第一回供述調書の供述記載を証拠として引用した。第一審において、当該調書は他の書面と共に順次朗読される方法で証拠調べが行われたが、証拠物として「展示」された旨の記載は公判調書になかった。弁護人は、当該調書が性質上「証拠物」であるから展示の手続きを要し、朗読のみによる証拠調べは違法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和25(れ)1745 / 裁判年月日: 昭和26年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察段階で拷問があったと主張される場合であっても、原判決が当該供述を証拠として採用していない以上、判決に証拠上の違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人が警察署において拷問を受けた旨を主張し、証拠の違法性を争った事案である。しかし、原判決を確認すると、警察段階での被告人の供述は一切証拠として…
あてはめ
本件の供述調書は、そこに記載された供述内容を証拠として用いるものであり、書面自体の存在や物理的状態を証拠とするものではない。したがって、当該書面は「証拠書類」に該当する。証拠書類の証拠調べは朗読(刑訴法305条)によってなされるべきであり、証拠物の証拠調べ方法である展示(同306条)を欠いたとしても、手続上の違法は認められない。原審が当該調書を証拠書類として扱った判断は適法である。
結論
司法警察員の作成した供述調書は「証拠書類」であり、朗読の方法により適法に証拠調べがなされているため、展示がないことを理由とする上告は理由がない。
実務上の射程
証拠書類と証拠物の区別に関するリーディングケースである。答案上は、証拠調べの方式(朗読か展示か)が問われる場面で、「立証趣旨(書面の何が証拠となるのか)」に注目して区別する際の規範として活用する。また、いわゆる「準文書」等の証拠調べを論じる際の基礎理論としても重要である。
事件番号: 昭和27(あ)3578 / 裁判年月日: 昭和28年11月30日 / 結論: 棄却
捜索差押調書は捜索差押許可状と共に提出しなければ証拠能力を欠くということはない。
事件番号: 昭和26(れ)490 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】拳銃の売買事実を認定する際、供述が予備弾倉について明示的に言及していなくても、予備弾倉が拳銃の附属品として一体的に示され、被告人がそれを含めて認める供述をしたのであれば、証拠に基づかない事実認定の違法はない。 第1 事案の概要:被告人Aは被告人Bに対し、拳銃、実弾および予備弾倉を売却し、Bはこれを…
事件番号: 昭和54(あ)727 / 裁判年月日: 昭和54年10月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法328条にいう「証拠」には、公判準備または公判期日における被告人その他の者の供述を弾劾するための証拠が含まれる。本件では、司法警察員に対する供述調書であっても、公判廷における供述を弾劾するために用いられる場合には証拠能力が認められる。 第1 事案の概要:被告人の刑事事件において、検察側は…
事件番号: 昭和26(れ)854 / 裁判年月日: 昭和26年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外に、適法な証拠調べを経た押収品等の物証が存在する場合には、憲法38条3項の「自白が被告人に不利益な唯一の証拠である場合」には当たらず、有罪判決を言い渡すことができる。 第1 事案の概要:被告人が脇差や日本刀等の所持により起訴された事案において、原審の公判調書には「押収品は全部これを…