原判決において被告人とともに共同正犯の一人と認定されている者にかかる恐喝被告事件につき無罪判決が確定したとしても、その一事をもつては、同一事実に関し被告人に対する第一審の有罪判決を維持した原判決につき、刑訴第四一一条を適用すべき事由があるとはいえない。
刑訴第四一一条にあたらない一事例(共犯者についての無罪判決の確定と被告人に対する有罪判決)
刑訴法411条
判旨
共犯関係にある者の一方が同一事実につき確定判決で無罪とされた場合であっても、他方の被告人に対する有罪判決につき、直ちに刑事訴訟法411条を適用して破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
問題の所在(論点)
共犯者の一方が同一の犯罪事実について無罪の確定判決を受けている場合、他方の被告人に対する有罪判決を維持することが刑事訴訟法411条の「著しく正義に反する」場合に該当するか。
規範
最高裁判所は、上告理由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること、または刑の量定が甚だしく不当であること等の事由があり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、職権で原判決を破棄することができる(刑事訴訟法411条)。もっとも、共犯者間で判決の結果が異なること自体は、各別の構成裁判所による証拠評価の結果として現行制度上避けがたい側面があり、直ちに同条の破棄事由には当たらない。
重要事実
被告人(三好)は、共犯者(松田)と共に恐喝等の罪に問われ、第一審および第二審で有罪判決を受けた。一方、共犯者である松田については、別個の公判手続において、同一の恐喝事実に関し、当初は有罪とされたものの、控訴審での差し戻しを経て、最終的に証拠不十分として無罪判決が確定した。被告人は、共犯者が無罪である以上、自身の有罪判決も破棄されるべきである旨を主張して上告した。
事件番号: 昭和27(れ)57 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人の一人の判決に審理不尽等の破棄理由がある場合であっても、他の被告人との間にその破棄理由が共通しない限り、当然には判決を破棄し差戻す必要はない。 第1 事案の概要:被告人らは、Cと原審および当審において共同被告人の関係にあった。Cについては、第二審判決において公判審理の更新をしないという手…
あてはめ
多数意見は、弁護人の上告趣意は適法な上告理由に当たらないとした上で、記録を精査しても職権破棄事由である刑事訴訟法411条を適用すべきものとは認められないと判断した。これに対し反対意見は、同一証拠に基づきながら共犯者間で有罪・無罪の結論が分かれることは、裁判に対する社会的信頼を著しく損なうものであり、本件の有罪判決を維持することは「著しく正義に反する」ため、職権で破棄し差し戻すべきであると主張したが、多数意見には採用されなかった。
結論
本件上告を棄却する。共犯者が無罪確定していても、被告人の有罪判決が当然に職権破棄の対象となるわけではない。
実務上の射程
実務上、刑事訴訟法411条(職権破棄)のハードルは極めて高く、共犯者間での事実認定の矛盾という事態であっても、各裁判体の独立した証拠評価の結果である限り、最高裁が介入する理由としては不十分であるとされる。答案上は、職権破棄の「著しく正義に反する」の解釈において、事実誤認や法令違反の程度を厳格に解する判例として引用し得る。
事件番号: 昭和26(れ)1688 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人側が量刑不当や事実誤認を主張して上告した場合であっても、それが刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を破棄すべき顕著な事由も認められないときは、上告は棄却される。 第1 事案の概要:被告人両名が、第一審または控訴審の判決に対し、量刑が重すぎること(量刑不当)お…
事件番号: 昭和41(あ)1986 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判において、起訴事実以外の余罪を実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは許されないが、量刑の判断に際し、被告人の性格や犯罪後の状況等の一情状として余罪を考慮することは許される。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実について有罪判決を受けた後、控訴審判決において、被告人が原判決後に前後3回にわた…
事件番号: 昭和26(あ)2321 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: 棄却
記録を調べると原判決書の記載には所論のような違法があることはこれを認めざるを得ないのであるが、ただ未だ以て刑訴四一一条を適用すべきものとは云い得ないのである。(註)「第一審が無罪とした判示第四事実について破棄自判して有罪と認めるに当り証拠説明を遺脱したもの」