他人の農地の売買における買主が売主に対して有する農地法三条所定の所有権移転許可の申請協力請求権の消滅時効は、売主が当該農地の所有権を取得した時から進行する。
他人の農地の売買における買主が売主に対して有する農地法三条所定の所有権移転許可の申請協力請求権の消滅時効の起算点
民法166条1項,民法560条,農地法3条
判旨
他人の農地の売買において、買主が売主に対して有する農地法上の許可申請協力請求権の消滅時効は、売主が他人から当該農地の所有権を取得した時から進行する。
問題の所在(論点)
他人の農地の売買における農地所有権移転許可申請協力請求権の消滅時効の起算点(「権利を行使することができる時」)はいつか。
規範
農地法3条所定の許可申請は、農地法施行規則により売主が農地の所有者であることを前提として売買当事者の連名でなされるべきものである。したがって、買主の許可申請協力請求権は、売主が知事の許可を得て他人から当該農地の所有権を取得した時に初めて「権利を行使することができる時」(民法166条1項1号、旧167条1項)に至り、その時から消滅時効が進行する。
重要事実
上告人(買主)は、昭和35年3月25日に被上告人(売主)から、第三者Dの所有する本件農地を買い受けた。被上告人は、昭和36年3月15日にDから当該農地を買い受け、同年7月28日に知事の許可を得てその所有権を取得した。その後、上告人が被上告人に対し許可申請手続を求めて提訴したが、被上告人は消滅時効を援用した。
事件番号: 昭和49(オ)1164 / 裁判年月日: 昭和50年4月11日 / 結論: 棄却
農地の買主が売主に対して有する知事に対する農地所有権移転許可申請協力請求権は、民法一六七条一項所定の債権にあたる。
あてはめ
本件において、被上告人がDから農地を買い受け、知事の許可を得て所有権を適法に取得したのは昭和36年7月28日である。許可申請は所有者が共同で行うべきものである以上、被上告人が所有権を取得したこの時点において初めて、上告人は被上告人に対し許可申請への協力を求めることが可能となったといえる。本件提訴時において、当該起算点から既に10年(旧法)が経過していたため、本件請求権は時効により消滅したと解される。
結論
本件請求権の消滅時効は、売主が所有権を取得した昭和36年7月28日から進行し、10年の経過により消滅したため、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
他人の権利の売買における協力義務の履行不能が解消された時点を起算点とする判断枠組みとして重要である。現在の民法166条1項1号(知った時)との関係でも、客観的起算点(同項2号)の解釈として答案上引用可能である。
事件番号: 昭和25(オ)240 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】時効の援用は訴訟上の防御方法としての性質を有するため、事実審である第二審の口頭弁論終結後にはこれを行うことができない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、特定の物件(目録記載の物件)について取得時効が成立していると主張し、上告審において初めて取得時効の援用を行った。原審(第二審)の口頭弁論終結時…
事件番号: 昭和44(オ)727 / 裁判年月日: 昭和45年2月26日 / 結論: 棄却
民法一六二条にいう公然の占有とは、占有者が、占有の存在を知るにつき利害関係を有する者に対して、占有の事実をことさら隠蔽しないことをいうものと解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)348 / 裁判年月日: 昭和35年9月2日 / 結論: 棄却
一 空襲により一家全滅した本家の再興のため、親族の協議により相続人に選ばれて本家の家業を継ぎ、相続財産に属する土地を占有している二二歳の女子につき、原審認定のような事実関係(原判決理由参照)があるときは、同人がその土地の所有権を取得したものと信ずるにつき過失はないものと解すべきである。 二 民法第一六〇条は、相続財産の…
事件番号: 昭和56(オ)575 / 裁判年月日: 昭和56年10月1日 / 結論: 棄却
農地の受贈者の贈与者に対して有する知事に対する所有権移転許可申請協力請求権は、民法一六七条一項所定の債権にあたる。