破産宣告当時破産者所有の不動産につき対抗力ある賃借権の負担が存する場合において、破産宣告後に右不動産が転貸されたとしても、特段の事情のない限り、転借人の転借権取得は破産法五四条一項所定の破産者の法律行為によらない権利の取得に該当しない。
破産宣告後の不動産転借権の取得と破産法五四条一項
民法612条,破産法54条1項
判旨
対抗力ある賃借権が付着した不動産が破産宣告後に転貸された場合、特段の事情がない限り、当該転借権の取得は旧破産法54条1項(現行破産法42条1項)に抵触せず、破産債権者に対抗できる。
問題の所在(論点)
破産宣告時にすでに対抗力のある賃借権が存在する場合において、破産宣告後になされた転貸借に基づく転借権の取得が、旧破産法54条1項(破産宣告後の権利取得の対抗力制限)により破産債権者に対抗できないとされるか。
規範
破産宣告当時、破産者所有の不動産につき対抗力ある賃借権の負担が存在する場合において、破産宣告後に当該不動産が転貸されたとしても、特段の事情のない限り、転借人の権利取得は、破産者の法律行為によらない権利の取得(旧破産法54条1項)には該当しない。賃借権の負担がある不動産は、その制限を受ける状態で破産財団を構成しており、転貸によって交換価値が消滅・減少する等の特段の事情がない限り、目的不動産に新たな負担を課すものではなく、破産財団の不利益とならないからである。
重要事実
破産者Dは、所有する本件土地建物について、破産宣告前に訴外会社Eとの間で、賃借権の譲渡・転貸を容認する旨の特約付で賃貸借契約を締結し、その登記を経由していた。その後、Dについて破産宣告がなされ、宣告後に上告人はEから本件土地建物を転借した。原審は、この転借権の取得は破産宣告後のものであるため、旧破産法54条1項により破産債権者に対抗できないと判断した。
あてはめ
本件では、破産宣告の時点で既にEが対抗力を備えた賃借権を有しており、本件不動産はEによる利用・収益の制限を受けた状態で破産財団を構成していた。また、賃貸借契約にはあらかじめ転貸を認める特約が付されており、この特約が破産宣告によって失効する理由はない。したがって、破産宣告後にEから上告人へ転貸されたとしても、これによって不動産の交換価値が新たに減少するなどの特段の事情がない限り、破産財団に不利益を与える「新たな負担」とはいえない。
結論
上告人の転借権取得は旧破産法54条1項に該当せず、破産債権者に対抗できる。したがって、原判決は破産法の解釈適用を誤っており、破棄を免れない。
実務上の射程
破産法42条1項(旧54条1項)の「権利の取得」の範囲を限定的に解釈する際の手法として有用である。賃借権が既に対抗力を備えている場合、その範囲内での利用主体の交代(転貸)は財団を実質的に毀損しないという理屈は、現代の破産実務においても通用する考え方である。
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