市の水道局給水課長が給水装置新設工事申込に対し当該建物が建築基準法に違反することを指摘して、その受理を事実上拒絶し申込書をその申込者に返戻した場合であつても、それが、右申込の受理を最終的に拒否する旨の意思表示をしたものではなく、同法違反の状態を是正して建築確認を受けたうえ申込をするよう一応の勧告をしたものにすぎず、他方、右申込者はその後一年半余を経過したのち改めて右工事の申込をして受理されるまでの間右申込に関してなんらの措置を講じないままこれを放置していたなど、判示の事実関係の下においては、市は、右申込者に対し右工事申込の受理の拒否を理由とする不法行為法上の損害賠償の責任を負うものではない。
違法建築物についての給水装置新設工事申込の受理の事実上の拒絶につき市が不法行為法上の損害賠償責任を負わないとされた事例
民法709条,民法715条,水道法15条1項
判旨
水道局給水課長が建築基準法違反の是正を求めて給水装置新設工事申込の受理を事実上拒絶した措置は、最終的な拒否ではなく一応の勧告にすぎず、放置された事情等の下では不法行為法上の違法性を欠く。
問題の所在(論点)
水道法上の供給義務がある中で、建築基準法違反を理由に給水工事申込の受理を事実上拒絶した行為が、国家賠償法上の違法な受理拒否に該当するか。
規範
行政庁の窓口における申込の受理拒絶が不法行為上の違法性を有するか否かは、当該措置が申込を最終的に拒否する意思表示であるか、あるいは行政目的達成のための「一応の勧告」にすぎないかによって判断される。相手方が是正措置を講じず長期間放置したなどの事情がある場合、最終的な拒否に至らない行政指導の範囲内として違法性が否定される。
重要事実
上告人は、建築基準法違反の状態にある建物について水道局給水課に給水装置新設工事の申込を行った。給水課長は、違反状態の是正と建築確認を受けた上での再申込を求めて申込書を返戻した。上告人はこの措置に対し、その後約1年半にわたり何ら措置を講じないまま放置し、その後改めて申込を行って受理された。上告人は、当初の受理拒絶により損害を被ったとして、被上告人市に対し国家賠償法に基づく損害賠償を求めた。
あてはめ
本件給水課長の措置は、申込を最終的に拒否する意思表示ではなく、建築基準法違反の是正を求める「一応の勧告」にすぎないと認められる。また、上告人は当該措置から1年半もの間、何ら不服を申し立てたり是正したりせず放置していた。このような事実関係の下では、当該措置のみをもって直ちに職員が受理を違法に拒否したものとはいえず、職務上の義務に違反する不法行為は成立しないと解される。
結論
給水課長の措置は適法な行政指導の範囲内であり、不法行為法上の損害賠償責任は認められない。
実務上の射程
行政庁による「受理の事実上の拒絶」が違法となるかどうかの境界線を示す。特に、建築法規等の他法令遵守を求める行政指導としての側面が強い場合や、相手方の対応(放置)が介在する場合には、違法性が否定されやすい。答案上は、拒絶の確定性と行政指導の必要性のバランスを検討する際に活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)1303 / 裁判年月日: 昭和39年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行吏が対象物件に他人の権利が及んでいる可能性を認識しつつ、その旨を公表して競売を実施した場合、債権者・債務者の主張に基づき手続を続行したことに職務上の違法性や過失は認められない。 第1 事案の概要:執行吏Dは、伐倒木の競売にあたり、裁判所書記官から当該物件が仮処分の対象である可能性を指摘されてい…