建築主が、建築確認申請に係る建築物の建築計画をめぐつて生じた付近住民との紛争につき関係機関から話合いによつて解決するようにとの行政指導を受け、これに応じて住民と協議を始めた場合でも、その後、建築主事に対し右申請に対する処分が留保されたままでは行政指導に協力できない旨の意思を真摯かつ明確に表明して当該申請に対し直ちに応答すべきことを求めたときは、行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで右申請に対する処分を留保することは、国家賠償法一条一項所定の違法な行為となる。
建築主と付近住民との紛争につき建築主に行政指導が行われていることのみを理由として建築確認申請に対する処分を留保することと国家賠償法一条一項所定の違法性
建築基準法6条3項,建築基準法6条4項,国家賠償法1条1項
判旨
建築確認の保留は、行政指導への任意の協力がある場合に社会通念上合理的な期間内に限り許容されるが、建築主が不協力の意思を明確に表明した後は、特段の事情がない限り違法となる。
問題の所在(論点)
行政指導が行われている場合に、建築主事による建築確認処分の留保が国家賠償法上の違法となる判断基準(特に建築主が不協力の意思を表明した後の留保の可否)。
規範
建築主事の確認処分義務は、原則として速やかに行われるべき裁量の余地のない義務である。もっとも、建築主が任意の協力として留保に同意している場合や、同意が不明確でも社会通念上合理的な期間であれば、応答留保は直ちに違法とはならない。しかし、建築主が確認処分の留保を伴う行政指導に応じられない旨の意思を真摯かつ明確に表明した場合には、建築主の不協力が社会通念上の正義の観念に反するといえるような「特段の事情」がない限り、留保を継続することは違法である。
重要事実
建築主Xは建築確認を申請したが、建築主事(東京都)は付近住民との紛争解決を求める行政指導を理由に処分を留保した。Xは当初協力的で十数回にわたり協議に応じたが、東京都が申請後に発表した新高度地区案に沿う設計変更を求めてきたことや、新基準実施が迫っていたことから、確認審査会に対し速やかな作為を求める審査請求を提起し、不協力の意思を明確にした。
あてはめ
Xは当初行政指導に積極的・協力的に対応しており、紛争未解決の責をXのみに帰すことはできない。Xが審査請求を提起したことは、これ以上の留保を伴う指導には協力できないという真摯かつ明確な意思表明といえる。また、新高度地区案による設計変更を求める指導に対し、Xが多大な損害を避けるために意思表明したことは不当といえず、他に受忍を正当化する特段の事情も認められない。したがって、意思表明後の留保には建築主事の過失も認められる。
結論
建築主が不協力の意思を明確に表明した後の確認処分の留保は違法であり、東京都は国家賠償法上の責任を負う。
実務上の射程
行政指導の限界、特に申請に対する応答義務との関係を示す重要判例。答案では「不協力の意思表示の有無」と、それに対抗しうる「特段の事情」の存否を具体的検討の柱とする。実務上、行政の指導権限と建築主の公権力行使請求権の調整基準として機能する。
事件番号: 平成3(オ)1386 / 裁判年月日: 平成5年4月23日 / 結論: 破棄差戻
一筆の土地に容積率の上限に近い建物を建築した上、右土地を分筆し、建物の存在しない方の土地をマンション建築用地として売り渡した者に対する買主の損害賠償請求訴訟において、買主が市から建築確認申請を保留するようにとの行政指導を受け、いったんマンションの建築を断念したが、後日、売主が容積率違反の状態を解消する措置を採ることを命…
事件番号: 平成12(行ツ)209 / 裁判年月日: 平成16年12月24日 / 結論: 破棄差戻
a町水道水源保護条例(平成6年a町条例第6号)が,町長の指定する水源保護地域内に,産業廃棄物処理業その他の所定の事業に係る事業場で水源の枯渇をもたらし,又はそのおそれがあるとの認定を町長から受けたものを設置することを禁止し,上記の認定については,上記地域内に上記事業に係る事業場を設置しようとする事業者と町長とがあらかじ…