公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、失火の責任に関する法律が適用される。
公権力の行使にあたる公務員の失火と失火の責任に関する法律の適用
国家賠償法1条1項,国家賠償法4条,失火の責任に関する法律
判旨
公務員の失火による国家賠償責任については、国家賠償法4条により民法の特則である失火責任法が適用される。したがって、当該公務員に重大な過失がある場合に限り、国または公共団体が賠償責任を負う。
問題の所在(論点)
公務員が公権力の行使として行う消火活動等の遂行中に失火させた場合において、国家賠償法4条に基づき失火責任法が適用されるか。すなわち、公共団体の賠償責任に「重大な過失」が必要か、それとも「軽過失」で足りるか。
規範
国家賠償法4条は、同法1条1項が適用される場合でも民法の規定が補充的に適用される旨を定めている。失火責任法は失火者の責任条件に関する民法709条の特則であるから、国賠法4条にいう「民法」に含まれる。また、公権力行使にあたる公務員の失火についてのみ同法の適用を排除すべき合理的理由もないため、公務員の失火による損害賠償責任には失火責任法が適用され、当該公務員に「重大な過失」があることが必要となる。
重要事実
消防署職員らが第一次出火の消火活動に出動したが、残り火の点検および再出火の危険回避を怠った。その結果、残り火が再燃して第二次火災が発生し、被害者(被上告人)に損害が生じた。原審は、消防署職員の消火活動には失火責任法が適用されないことを前提に、軽過失の存在をもって国家賠償法1条1項に基づく公共団体の賠償責任を認めたため、公共団体側が上告した。
あてはめ
本件における消防署職員の消火活動および残り火の点検不足は、公権力の行使にあたる公務員の行為である。この活動から生じた火災(失火)について公共団体の責任を問う場合、国家賠償法4条を介して失火責任法が適用される。そのため、原審が認定した「残り火の点検、再出火の危険回避を怠った過失」が、単なる過失にとどまるのか、それとも失火責任法にいう「重大な過失」に該当するのかを判断しなければならない。
結論
公務員の失火による国家賠償責任には失火責任法が適用されるため、重大な過失の有無を審理せずに賠償責任を認めた原判決は失当である。重大な過失の有無を審理させるため、原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
公務員による失火事案(消火失敗、公有地での火気管理ミス等)全般に射程が及ぶ。答案上は、まず国賠法1条1項の要件(公務員、職務権限、過失、損害、因果関係)を示した上で、過失の程度について「4条により失火責任法が適用される結果、重過失が必要である」と論証する流れで用いる。
事件番号: 昭和51(オ)980 / 裁判年月日: 昭和53年4月14日 / 結論: 棄却
失火の責任に関する法律は、被害者のなんらかの既得の損害賠償請求権を侵害するものではないから、これを侵害することを前提として憲法二九条違反をいうのは前提を欠く。
事件番号: 昭和41(オ)64 / 裁判年月日: 昭和41年6月3日 / 結論: 棄却
ストーブおよびその煙突に腐蝕ないし接合不良の箇所があり、過去二年間に三回も小火を出したことがあつて、消防署や隣人から注意を受けていたが、僅かに消火器を備えていた程度で、ストーブから約三〇糎の距離の場所に依然として木綿や毛糸のボロ屑を山積しており、出火当日も、午後七時半頃ストーブの残り火があつたのに、その後見廻りもしなか…