運送人が国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和二八年条約第一七号。同四二年条約第一一号による改正前のもの)二二条二項所定の限定責任の範囲で損害賠償義務を負う場合、これに対する遅延損害金については右規定による限定を受けない。
国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和二八年条約第一七号。同四二年条約第一一号による改正前のもの)二二条二項所定の運送人の責任限定と遅延損害金
国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和28年条約第17号。同42年条約11号による改正前のもの)22条2項,国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和28年条約第17号。同42年条約11号による改正前のもの)24条1項,商法514条,民法419条
判旨
国際航空運送条約に基づく運送人の責任制限規定は、本来の損害賠償義務の範囲を限定するものであり、その履行遅滞により生じる遅延損害金には適用されない。
問題の所在(論点)
ワルシャワ条約22条2項等に基づく運送人の責任制限規定の効力が、本来の損害賠償義務の履行遅滞により発生する遅延損害金に対しても及ぶか。
規範
国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(ワルシャワ条約)に定める責任制限規定は、運送中に生じた事故や延着による「損害そのもの」の賠償額を制限するものである。これに対し、遅延損害金は金銭債務の履行遅滞という新たな原因に基づく法定賠償の一種であるから、条約上の責任制限の範囲に含まれず、限定された損害賠償額とは別個に付加して支払われるべきものである。
重要事実
上告人(運送人)は国際航空運送契約に基づき、ダイヤモンド0.3キログラムを輸送する義務を負っていたが、これを紛失した。原審は、条約22条2項の責任制限規定を適用し、貨物重量に応じた限度額(1,848円)の損害賠償を認めるとともに、当該賠償金に対する訴状送達翌日から完済までの商事法定利率(年6分)による遅延損害金の支払いを命じた。上告人は、遅延損害金も含めて条約の責任制限額に収まるべきであるとして上告した。
あてはめ
ワルシャワ条約の責任制限規定は、航空運送という危険を伴う業務において損害賠償額を一定の範囲(貨物1キログラムにつき250フラン等)に限定するものである。しかし、遅延損害金は、確定した損害賠償債務について履行遅滞に陥った債務者に対し、その遅滞を要件として課される性質のものである。本件では、条約の制限に従い算定された1,848円という賠償義務が確定した以上、その履行を遅滞したことによる遅延損害金は、条約が想定する「運送中に生じた損害」の枠外の問題として、制限を受けずに課されると解するのが相当である。
結論
運送人は、条約に定める限度での損害賠償義務を負うほか、その履行に至るまで付加して所定の遅延損害金を支払う義務を負う。原審の判断は正当である。
実務上の射程
責任制限規定を有する特別法や条約(商法上の運送規定や国際条約など)の解釈において、制限の対象が「事故等による直接の損害」か、あるいは「債務不履行後の遅滞利息」まで含むのかを区別する際の指針となる。答案上は、責任制限の趣旨を考慮しつつも、金銭債務の履行遅滞という別個の法的性質を強調する文脈で使用できる。
事件番号: 昭和47(オ)541 / 裁判年月日: 昭和51年3月19日 / 結論: 棄却
一、国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和二八年条約第一七号。右条約を改正する議定書(昭和四二年条約第一一号)による改正前のもの)二五条一項にいう「訴が係属する裁判所の属する国の法律によれば故意に相当すると認められる過失」とは、我が国の法律上、「重大な過失」を意味するものと解すべきである。 二、航空運送…