一 安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、債権者から履行の請求を受けた時に履行遅滞となる。 二 安全保証義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族は、固有の慰藉料請求権を有しない。
一 安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務の履行遅滞となる時期 二 安全保証義務違背の債務不履行により死亡した者の遺族と固有の慰藉料請求権の有無
民法412条,民法415条
判旨
安全配慮義務違反(債務不履行)に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、債権者からの履行請求を受けた時から遅滞に陥る。また、雇用契約上の債務不履行を理由に、契約の当事者ではない遺族が固有の慰謝料請求権を取得することはない。
問題の所在(論点)
1. 安全配慮義務違反に基づく損害賠償債務の遅延損害金発生起算点はいつか。 2. 雇用契約上の債務不履行に基づき、契約当事者以外の遺族が固有の慰謝料請求権を取得できるか。
規範
1. 債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、民法412条3項により、債務者が債権者から履行の請求を受けた時から遅滞に陥る。 2. 雇用契約上の安全配慮義務違反(債務不履行)に基づき、契約当事者ではない遺族が固有の慰謝料を請求することは認められない。
重要事実
亡Dは、被上告人B会社の塗装工として稼働していたが、業務上の事故により死亡した。Dの両親である上告人らは、B会社らに対し、択一的に不法行為または安全配慮義務違反(債務不履行)に基づき、Dの逸失利益の相続分および遺族固有の慰謝料の支払いを求めた。上告人らは事故発生翌日からの遅延損害金も請求したが、債務不履行に基づく請求が初めて主張されたのは、第一審における昭和48年11月26日付の準備書面提出時であった。
あてはめ
1. 本件損害賠償請求は債務不履行に基づくものであり、期限の定めのない債務である。本件で履行の請求がなされたのは、当該請求を初めて主張した準備書面が裁判所に提出され、相手方に交付された昭和48年11月26日である。したがって、その翌日から遅延損害金が発生するといえる。 2. 慰謝料について、上告人ら(遺族)は亡Dと被上告人との間の雇用契約(またはこれに準ずる法律関係)の当事者ではない。契約関係にない以上、当該契約上の債務不履行を理由として遺族が固有の慰謝料請求権を取得することはできないと解される。
結論
1. 遅延損害金は履行請求の翌日である昭和48年11月27日から発生する。 2. 遺族固有の慰謝料請求は、債務不履行構成をとる限り認められない。
実務上の射程
不法行為(事故時)と債務不履行(履行請求時)で遅延損害金の起算点が異なることを示す実務上重要な判例。また、遺族固有の慰謝料を求める場合は、債務不履行構成ではなく不法行為構成を選択すべきという起案上の指針となる。
事件番号: 昭和59(オ)15 / 裁判年月日: 平成元年9月21日 / 結論: その他
一 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務は、履行の請求を受けた時に履行遅滞となる。 二 商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)二六六条ノ三第一項前段所定の損害賠償債務の遅延損害金の利率は、年五分である。