注文者が民法六三七条所定の期間の経過した請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とし請負人の報酬請求権を受働債権としてする相殺については、同法五〇八条の類推適用がある。
民法六三七条所定の期間の経過した請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を自働債権とし請負人の報酬請求権を受働債権としてする相殺と同法五〇八条
民法508条,民法634条2項,民法637条
判旨
請負契約の注文者が持つ瑕疵修補に代わる損害賠償請求権が、除斥期間経過前に請負代金請求権と相殺適状にあった場合、民法508条を類推適用して期間経過後も相殺できる。
問題の所在(論点)
請負の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権について、民法637条1項(当時)の定める期間(除斥期間)が経過した後に、期間経過前に相殺適状にあったことを理由として、民法508条を類推適用し相殺を主張できるか。
規範
請負代金支払義務と目的物引渡義務の対価的牽連性、および損害賠償請求権が実質的に代金減額の機能を有することに鑑み、期間内に相殺適状に達していたときは、民法508条を類推適用すべきである。公平の見地から、両債権が対当額で消滅したと信じた注文者の信頼を保護する必要があり、期間の性質が時効か除斥期間かによって結論を異にする合理的理由はない。
重要事実
注文者(被上告人)は請負人(上告人)に対し、仕事の目的物の瑕疵に基づく損害賠償請求権を有していた。この損害賠償請求権と請負人の代金請求権は、民法637条1項(当時)の定める1年の期間が経過する前に、相殺適状に達していた。しかし、注文者が実際に相殺の意思表示をしたのは、当該期間が経過した後であった。
事件番号: 昭和48(オ)558 / 裁判年月日: 昭和50年2月25日 / 結論: 破棄差戻
単価を六五円とする穀用かますの売買契約において引き渡された一二万八一〇〇枚につき、買主が売主にあてて、右かますに欠陥があることを具体的に指摘したうえ、穀用かますとしての商品価値が認められず、一枚当り二〇円、数量一二万八一〇〇枚、この代金二五六万二〇〇〇円としての減価採用で精算させていただく等判示のような記載のある書面を…
あてはめ
本件損害賠償請求権と請負代金請求権は、目的物の引渡から1年以内である昭和45年3月末日に相殺適状に達していた。注文者はこの時点で債権が対当額で消滅したと信頼したといえる。その後、権利行使の期間を経過したとしても、期間内に相殺適状にあった以上、民法508条の類推適用により相殺の意思表示は有効と評価される。
結論
除斥期間経過後であっても、期間内に相殺適状に達していた場合には、損害賠償請求権を自働債権とする相殺は有効である。
実務上の射程
改正前民法下の判例であるが、改正後民法においても期間制限(566条、637条)がある債権の相殺の可否を判断する際の一般法理として重要である。除斥期間であっても「時効」を前提とする508条の類推適用を認めた点に実務上の大きな射程がある。
事件番号: 平成16(受)519 / 裁判年月日: 平成18年4月14日 / 結論: 破棄自判
本訴及び反訴が係属中に,反訴原告が,反訴請求債権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは,異なる意思表示をしない限り,反訴を,反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分を反訴請求としない趣旨の予備的反訴に変更するものとして,許される。
事件番号: 昭和59(オ)543 / 裁判年月日: 昭和60年5月17日 / 結論: その他
請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合において、残工事の施工に要した費用として、注文者が請負人に賠償を請求することができるのは、右費用のうち、未施工部分に相当する請負代金額を超える部分に限られる。
事件番号: 昭和49(オ)721 / 裁判年月日: 昭和50年9月26日 / 結論: 棄却
化粧品の製造販売を業とする被上告人はかねて化粧品の販売を業とする上告人より注文を受け同人の指示にしたがつて化粧品を製造して供給し、右化粧品は上告人の販売網を通じて他に売却されていたところ、昭和四一年二月二四日及び同年四月四日被上告人は上告人よりマニキュア、除光液及びアイライン等計四六〇〇ダースの注文を受け製造にとりかか…