一、憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但し書は、国会両議院の議員の選挙における選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値が平等であることを要求するものであり、右各選挙につき国会が定めた具体的な選挙制度において、国会が正当に考慮することができる重要な政策的目的ないし理由に基づく結果として合理的に是認することができない投票価値の不平等が存するときは、憲法の右規定の違反となる。 二、公職選挙法一三条、同法(昭和五〇年法律第六三号による改正前のもの)別表第一及び附則七項ないし九項による選挙区及び議員定数の定めは、昭和四七年一二月一〇日の衆議院議員選挙当時、全体として憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但し書に違反していたものである。 三、衆議院議員選挙が憲法に違反する公職選挙法の選挙区及び議員定数の定めに基づいて行われたことにより違法な場合であつても、それを理由として選挙を無効とする判決をすることによつて直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえつて憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずる判示のような事情などがあるときは、行政事件訴訟法三一条一項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに当該選挙が違法である旨を主文で宣言すべきである。
一、憲法一四条一項、一五条一、三項、四四条但し書と国会両議院議員の選挙における選挙人の投票価値の平等 二、公職選挙法一三条、同法(昭和五〇年法律第六三号による改正前のもの)別表第一及び附則七項ないし九項による選挙区及び議員定数の定めの合憲性 三、衆議院議員選挙が憲法に違反する公職選挙法の選挙区及び議員定数の定めに基づいて行われたことにより違法な場合において行政事件訴訟法三一条一項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに当該選挙が違法である旨を主文で宣言すべきものとした事例
憲法14条1項,憲法15条1項,憲法15条3項,憲法44条但書,公職選挙法13条,公職選挙法204条,公職選挙法205条1項,公職選挙法219条,公職選挙法(昭和50年法律第63号による改正前のもの)別表第1,公職選挙法(昭和50年法律第63号による改正前のもの)附則7項,公職選挙法(昭和50年法律第63号による改正前のもの)附則8項,公職選挙法(昭和50年法律第63号による改正前のもの)附則9項,行政事件訴訟法31条1項
判旨
衆議院議員定数配分規定が投票価値の著しい不平等により違憲である場合でも、選挙を無効とすることによる混乱を避けるため、行政事件訴訟法31条の法理を類推適用し、選挙自体は有効としつつ主文で違法を宣言する「事情判決」の手法をとることができる。
問題の所在(論点)
衆議院議員定数配分規定が、投票価値の不平等により憲法14条1項に違反するか。また、違憲である場合、当該規定に基づき実施された選挙を無効とすべきか。
規範
1. 憲法14条1項等の平等原則は、選挙権の内容、すなわち投票価値の平等も要求する。もっとも、具体的選挙制度の決定は国会の裁量に委ねられており、投票価値の平等は他の政策的目的との関連で調和的に実現されるべきものである。 2. ただし、投票価値の不平等が、諸般の要素を考慮しても合理性を有すると考えられない程度に達しているときは、国会の合理的裁量の限界を超えて憲法違反となる。もっとも、人口変動による不平等は、合理的期間内に是正がなされない場合に初めて憲法違反と確定する。 3. 違憲な規定に基づく選挙であっても、無効判決により憲法上の所期しない混乱を生ずる場合には、行政事件訴訟法31条1項の法理に基づき、選挙を無効とせず違法宣言に留めることが許される。
重要事実
昭和47年12月に実施された衆議院議員選挙において、選挙区間の議員1人あたりの人口比率の最大格差が4.99対1に達していた。公職選挙法の別表第一(議員定数配分規定)は、昭和39年の改正後、人口の都市集中という急激な社会変化があったにもかかわらず、約8年間にわたり是正措置が講じられていなかった。
あてはめ
1. 最大格差約5対1という事態は、国会の政策的裁量を考慮しても合理性を有するとは到底いえない程度に達している。また、5年ごとの更正を例とする公選法の規定に反し、8年以上是正されなかったことは、合理的期間内の是正を怠ったものといえる。したがって、本件配分規定は全体として憲法違反の瑕疵を帯びる。 2. もし選挙を無効とすれば、選出された議員の資格が失われ、衆議院の活動が不可能になり、是正のための立法自体もできなくなるという憲法が所期しない不当な結果を招く。これは公職選挙法219条が行訴法31条の準用を排除している趣旨(個別的な公選法違反)を超えた事態であり、一般原則としての事情判決の法理を適用すべきである。
結論
本件定数配分規定は憲法に違反し、これに基づき行われた本件選挙は違法である。しかし、選挙自体は無効とはせず、上告人の請求を棄却する(主文で違法を宣言する)。
実務上の射程
定数不均衡訴訟において「違憲状態」「違憲判決」「事情判決」を導く際のリーディングケース。答案上は、裁量権の逸脱、合理的期間の経過、事情判決の適用の三段階で論じる必要がある。
事件番号: 平成11(行ツ)241 / 裁判年月日: 平成12年9月6日 / 結論: 棄却
平成六年法律第四七号による参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の改正の結果、選挙区間において、同二年の国勢調査による人口に基づく議員一人当たりの人口及び右改正当時における議員一人当たりの選挙人数にそれぞれ最大一対四・八一及び最大一対四・九九の較差が残ることとなったとしても、右改正をもって国会の立法裁量権の限界を超…