一 公職選挙法一三条一項、同法別表第一、同法附則七項ないし九項の衆議院議員の議員定数配分規定は、昭和五八年一二月一八日施行の衆議院議員選挙当時、全体として憲法一四条一項に違反していたものである。 二 衆議院議員選挙か憲法一四条一項に違反する議員定数配分規定に基づいて行われたことにより違法な場合であつても、選挙を無効とする結果余儀なくされる不都合を回避することを相当とする判示のような事情があるときは、いわゆる事情判決の制度の基礎に存するものと解すべき一般的な法の基本原則に従い、選挙無効の請求を棄却するとともに主文において当該選挙が違法である旨を宣言すべきである。
一 公職選挙法一三条一項、同法別表第一、同法附則七項ないし九項の衆議院議員の議員定数配分規定の合憲性 二 衆議院議員選挙が違憲の議員定数配分規定に基づいて行われた場合において選挙無効の請求を棄却するとともに主文において当該選挙が違法である旨を宣言すべきものとされた事例
憲法14条1項,公職選挙法13条,公職選挙法204条,公職選挙法205条1項,公職選挙法別表第1,公職選挙法附則7項ないし9項,行政事件訴訟法31条1項
判旨
衆議院議員定数配分規定は、投票価値の不平等が合理性を有すると考えられない程度に達し、かつ合理的期間内に是正がなされない場合に憲法14条1項に違反して違憲となる。その際、選挙無効による不都合が著しいときは、事情判決の法理を類推適用して選挙を有効としつつ、当該選挙が違法である旨の宣言を主文でなすべきである。
問題の所在(論点)
衆議院議員定数配分規定が憲法14条1項に違反するか。また、違憲である場合、公職選挙法204条に基づく選挙無効請求に対し、裁判所はいかなる判決をすべきか。
規範
1. 憲法14条1項は投票価値の平等を要求するが、選挙制度の具体的内容は国会の広範な裁量に委ねられる(43条、47条)。したがって、較差が一般に合理性を有すると考えられない程度に達しているときは、合理的裁量の限界を超えたものとして違憲の不平等状態と推定される。 2. 人口異動により事後的に不平等が生じた場合、憲法上要求される合理的期間内に是正が行われないときに初めて当該規定は違憲となる。 3. 定数規定が違憲であっても、選挙を無効とすることによる不都合と基本的権利の制約等の弊害を総合較量し、行政事件訴訟法31条1項の基礎にある一般的な法の基本原則(事情判決の法理)に基づき、選挙の無効を回避しつつ違法宣言にとどめることができる。
重要事実
昭和58年施行の衆議院議員選挙(本件選挙)当時、議員定数配分規定による一票の較差は最大1対4.40に達していた。前回の昭和55年選挙時の較差(1対3.94)について、最高裁は既に「憲法の平等の要求に反する状態」である旨を判示していたが、本件選挙までの約3年半の間、国会による定数是正の立法措置は講じられていなかった。
あてはめ
1. 本件の最大較差1対4.40は、国会が通常考慮し得る諸要素を斟酌しても合理性を有する程度を超えており、違憲状態にある。 2. 前回の判示から本件選挙まで、較差が予測可能な形で拡大し続けていたにもかかわらず是正がなされなかったことは、憲法上要求される合理的期間を経過したものと認められる。よって本件規定は全体として違憲である。 3. しかし、選挙を無効とすれば直ちに再選挙を行うことができず(新たな立法が必要なため)、議員欠員状態での立法活動という憲法の予定しない不都合が生じる。他方、違憲判断を明示して将来の是正を促す必要もある。
結論
本件定数配分規定は憲法14条1項に違反し、これに基づき行われた本件選挙は違法である。もっとも、事情判決の法理により選挙自体は無効とせず、請求を棄却した上で、主文にて当該選挙の違法を宣言する。
実務上の射程
定数訴訟における判例の基本的枠組み(合理的期間説および事情判決の法理)を確立した事例である。答案上は、14条の「実質的平等」の論証から、国会の裁量(合理的期間)を経て、行訴法31条の類推適用による「違法宣言」という主文の構成までをセットで記述する際に用いる。現在の「違憲状態」判決の運用につながる重要判例である。
事件番号: 昭和61(行ツ)102 / 裁判年月日: 昭和62年2月17日 / 結論: 棄却
東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和四四年東京都条例第五五号)の議員定数配分規定は、昭和六〇年七月七日の東京都議会議員選挙当時、公職選挙法一五条七項に違反していたものである。