土地等の買受人が、その買受につき宅地建物取引業者に仲介を依頼し、買受契約の成立を停止条件として一定額の報酬を支払う旨を約したのに、買受人が右業者を排除して直接売渡人との間に契約を成立させた場合において、右契約の成立時期が業者の仲介活動の時期に近接しているのみならず、当時その仲介活動により買受人の買受希望価額にあと僅かの差が残つているだけで間もなく買受契約が成立するに至る状態にあつたのであり、しかも、買受契約における買受価額が業者と買受人が下相談した価額を僅かに上廻る等の事情のあるときは、買受人は、業者の仲介によつて間もなく買受契約の成立に至るべきことを熟知して故意にその仲介による契約の成立を妨げたものというべきであり、業者は、停止条件が成就したものとみなして、買受人に対し、約定報酬の請求をすることができる。
宅地建物取引業者を排除して売買契約が成立した場合に停止条件の成就が故意に妨げられたとして右業者の報酬請求権が認められた事例
民法130条,民法645条,民法648条
判旨
不動産売買等の仲介において、依頼者が報酬支払を免れる目的で仲介人を故意に排除して直接契約を成立させた場合、民法130条に基づき条件成就が擬制され、報酬請求が認められる。
問題の所在(論点)
仲介契約の依頼者が、仲介人の報酬支払を免れるために故意に仲介人を排除して直接契約を成立させた場合、民法130条により報酬支払の停止条件が成就したものとみなされるか。
規範
条件の成就によって利益を受ける当事者が、故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる(民法130条)。仲介契約において契約成立を停止条件として報酬を支払う約定がある場合、当事者が仲介人による契約成立を避ける目的で故意に仲介人を排除して直接契約を成立させたときは、条件成就が擬制される。
重要事実
上告人は、被上告人に対し、土地を更地として取得することの仲介を依頼し、取得契約の成立を停止条件として取引価額の3%の報酬を支払う約定を設けた。被上告人の仲介活動により、売買価額について合意まであと僅かの差という段階に達していたが、上告人および相手方らは、被上告人による仲介の成立を避けるために被上告人を排除し、直接当事者間で売買契約および建物明渡契約を成立させた。なお、成立した契約内容は被上告人の仲介活動の内容とほぼ同一であった。
あてはめ
上告人の行為は、仲介人による契約成立が間近であることを熟知しながら、意図的に仲介人を排除したものである。売買契約の成立時期が仲介活動と密接していること、売買価額が仲介活動での相談額を上回る形での合意であったこと、明渡契約の内容が仲介活動の結果と同一であったことから、上告人には条件成就を妨げる「故意」が認められる。したがって、信義則上、停止条件である「仲介による契約成立」が成就したものとみなされる。
結論
上告人は、民法130条により条件が成就したものとみなされる結果、被上告人に対し約定の報酬を支払う義務を負う。
実務上の射程
民法130条の「故意に条件の成就を妨げた」の認定において、仲介活動の進捗度(合意直前か)、排除の意図(報酬免脱目的か)、最終的な契約内容の同一性を総合考慮する枠組みとして機能する。司法試験では、信義則を具体化した条文として、仲介手数料の請求事案で活用すべき射程を持つ。
事件番号: 昭和36(オ)1232 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
不動産取引仲介業者に対する不動産売買仲介の依頼が合意解除された後、当事者間の直接取引により右不動産を目的とする売買契約が成立した場合においても、右業者の仲介と当該売買契約成立との間に因果関係がなく、右解除も故意に右業者を除外する目的でなされたものでなく、かつ、右依頼に関して報酬金の特約もなかつたときに、右業者が報酬金を…