民法上の組合において、組合規約に基づき、自己の名で組合財産を管理し、対外的業務を執行し、訴訟を追行する権限を与えられた業務執行組合員は、組合財産に関する訴訟につき、組合員から任意的訴訟信託を受けたものであり、自己の名で訴訟を追行することが許される。
民法上の組合の業務執行組合員に対する組合員の任意的訴訟信託の許否
民訴法45条,民法670条
判旨
民法上の組合の業務執行組合員に対し、組合規約に基づき実体上の管理権と共に訴訟追行権が授与されている場合、弁護士代理の原則等を潜脱するおそれがなく合理的必要がある限り、任意的訴訟信託として当事者適格が認められる。
問題の所在(論点)
民訴法30条(旧47条)の選定当事者制度以外に、明文のない任意的訴訟信託が認められるか。特に、民法上の組合の業務執行組合員に対し、規約により実体上の管理権と共に訴訟追行権が付与されている場合に、当事者適格が認められるか。
規範
任意的訴訟信託は、弁護士代理の原則(民訴法54条1項参照)や信託法による訴訟信託の禁止(現信託法11条)を回避・潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める合理的必要がある場合には許容される。特に、組合規約に基づき、業務執行組合員に自己の名で組合財産を管理し対外的業務を執行する実体上の管理権が付与されている場合、これに伴う訴訟追行権の授与は、特段の事情のない限り上記制限を潜脱するものとはいえず、合理的必要性も認められる。
重要事実
5名の構成員から成る民法上の組合である共同企業体(JV)において、代表者である上告人は、規約上、発注者との折衝権限、自己の名による代金請求・受領権限、および組合財産の管理権限を有していた。上告人は、発注者である被上告人が請負契約を解除したことによる損害賠償を求め、組合員全員ではなく自己の名で提訴したところ、選定当事者の手続(民訴法30条)を経ない任意的訴訟信託にあたるとして、当事者適格の有無が争われた。
あてはめ
本件の上告人は、組合規約により、対外的な業務執行権や組合財産の管理権といった広範な実体上の権限を与えられている。このような権限に伴い訴訟追行権が授与されることは、単に訴訟のみを目的とするものではなく、実体上の管理権と不可分に結びついたものである。したがって、弁護士代理の原則を回避したり信託法等の制限を潜脱したりするおそれはなく、組合運営の円滑化という観点から合理的必要性も認められる。ゆえに、本件上告人は、選定手続を経ずとも当事者適格を有する。
結論
民法上の組合において、規約により実体上の管理権を有する業務執行組合員は、任意的訴訟信託に基づき、組合財産に関する訴訟につき自己の名で訴訟を追行する当事者適格を有する。
実務上の射程
明文なき任意的訴訟信託の一般要件(潜脱のおそれの欠如+合理的必要性)を示した重要判例である。答案上は、まず原則として任意的訴訟信託が禁止される理由(弁護士代理原則等)を述べた後、本判例の規範を示して例外的に認容する。実務上、民法上の組合(JV等)の業務執行組合員による訴訟は、本判例により当事者適格が肯定される定番の類型として扱われる。
事件番号: 昭和34(オ)130 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
代表者の定めがある民法上の組合は、訴訟当事者能力を有する。