一、司法書士が、即決和解申立書作成の嘱託を受け、その行為に関連して、即決和解申立の対象となつた法律関係について、和解契約締結の委任を受け、相手方との間に和解契約を締結することは、司法書士法九条に違反して司法書士がその業務の範囲を越えて他人問の事件に関与したことにあたる。 二、司法書士が司法書士法九条に違反して、和解契約締結の委任を受け相手方との間に和解契約を締結した場合であつても、右和解契約は、同条に違反するのゆえをもつてただちに無効であるとすることはできない。
一、司法書士法九条に違反するとされた事例 二、司法書士法九条に違反する行為の効力
司法書士法9条,民法90条
判旨
司法書士が業務範囲を超えて代理人として締結した私法上の和解契約は、その行為が司法書士法(昭和39年法律第67号による改正前)に違反する場合であっても、当然に無効とはならない。特段の事情がない限り、第三者保護や取引の安全の観点から私法上の効力は維持される。
問題の所在(論点)
司法書士がその業務範囲(書類作成等)を逸脱し、代理人として私法上の和解契約を締結した場合、当該和解契約は司法書士法違反により無効となるか。また、即決和解が訴訟行為として無効であっても、私法上の和解契約としての効力を有しうるか。
規範
司法書士法(改正前9条)の禁止規定は、国民の法律生活における正当な利益の保護と司法秩序の維持を目的とする行政上の取締規定である。同法には違反行為の私法上の効力を否定する明文がなく、禁止対象も広く、行為自体に当然の違法性・反社会性があるわけではない。したがって、同条違反の行為であっても、直ちに私法上の効力が否定されるものではなく、その内容が公序良俗に反する等の特段の事情がない限り、第三者保護の見地から有効と解すべきである。
重要事実
上告人は被上告人から50万円を借り受け、本件土地に譲渡担保及び停止条件付代物弁済契約を設定した。上告人の姉Dは、上告人から債務処理の一切の権限を与えられ、司法書士Eに即決和解手続を依頼した。Eは、裁判所の許可を得て上告人の代理人として「期限までに完済しないときは代物弁済として土地を移転する」旨の即決和解を成立させた。後に、Eには訴訟行為の受任権限がないとして訴訟上の和解の効力が争われたが、原審は私法上の和解契約としての成立を認めた。
事件番号: 昭和43(オ)916 / 裁判年月日: 昭和44年7月4日 / 結論: 棄却
一、労働金庫の会員外の者に対する貸付は無効である。 二、労働金庫の員外貸付が無効とされる場合においても、右貸付が判示のような事情のもとにされたものであつて、右債務を担保するために設定された抵当権が実行され、第三者がその抵当物件を競落したときは、債務者は、信義則上、右競落人に対し、競落による所有権の取得を否定することは許…
あてはめ
まず、即決和解は訴訟行為としての側面と私法上の契約としての側面を併せ持つため、訴訟行為として無効であっても直ちに私法上の契約まで無効にはならない。次に、司法書士Eが代理人として和解した行為は、当時の司法書士法9条が禁止する業務範囲逸脱行為に該当する。しかし、同法違反には懲戒や刑事罰の制裁が備わっており、それらによって禁止の目的は一応達成可能である。本件和解の内容は、債務額に照らして土地時価が不相当に高額とはいえず、公序良俗に反するような特段の事情も認められない。よって、第三者保護および取引の安全の観点から、本件私法上の和解は有効であるといえる。
結論
司法書士の業務範囲逸脱行為であっても、公序良俗違反等の特段の事情がない限り、私法上の和解契約としての効力は妨げられない。本件土地の移転は有効である。
実務上の射程
資格者の権限外行為の私法上の効力を判断した重要判例である。行政法規(取締規定)違反と私法上の契約の効力を切り離して考える枠組みとして活用できる。ただし、現代の弁護士法72条違反(非弁行為)が絡む事案では、公序良俗違反(民法90条)として無効とされる可能性が高まっている点に留意が必要である。
事件番号: 昭和43(オ)446 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
予告登記の存することの一事から、これに後行して係争不動産につき物権の得喪変更に関する法律行為を為した第三者が、当該登記原因の瑕疵につき悪意と推定されるべき筋合はない。
事件番号: 昭和42(オ)576 / 裁判年月日: 昭和43年11月19日 / 結論: 棄却
一、宗教法人が、宗教法人法第二四条本文に掲げる財産を処分するに当たつてした同法第二三条の公告が、その時期、期間などの点において、同条および右宗教法人の規則の定と相違する場合に、当該行為の効力を判断するに当たつては、公告によつて行為の要旨を信者その他の利害関係人に周知させ、不当な処分を防止しようとする同法の趣旨が維持され…
事件番号: 平成16(オ)402 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 破棄差戻
甲名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。
事件番号: 昭和26(オ)201 / 裁判年月日: 昭和28年5月8日 / 結論: 棄却
不法原因給付の返還のための代物弁済は、有効である。