株式会社の取締役全員の職務の執行を停止しその代行者を選任する仮処分の裁判があつたのち、右取締役全員が辞任し、後任の取締役が選任された場合において、代表取締役が欠けているときは、右後任取締役が構成する取締役会の決議をもつて代表取締役を定めることができるが、右代表取締役は、仮処分の存続中は、その権限を行使することができない。
株式会社の取締役に対する職務執行停止代行者選任の仮処分後右取締役が辞任し後任の取締役が選任された場合における代表取締役の選任および右代表取締役の権限の行使
商法261条,商法270条,民訴法760条
判旨
取締役の職務執行停止・代行者選任の仮処分がある場合、後任取締役が選任されても仮処分が取り消されない限り代行者の権限は消滅しないが、後任取締役らによる代表取締役の選任は有効である。選任された代表取締役は、仮処分失効後に追認等を行うことで、有効に会社の行為として成立させることができる。
問題の所在(論点)
取締役の職務執行停止・代行者選任の仮処分が存続している場合に、後任取締役が選任されたことによって仮処分が当然に失効するか。また、後任取締役らによる代表取締役の選任決議の効力、および選任された代表取締役による行為の有効性が問題となる。
規範
1. 取締役の職務執行停止・代行者選任の仮処分は、事情変更による取消判決(民事保全法に基づく手続)がない限り、後任取締役が選任されたことのみをもって当然には失効せず、代行者の権限も消滅しない。2. 職務代行者が選任されている間、後任取締役は原則として代行者の権限と抵触する範囲で職務執行を制限される。3. もっとも、代表取締役が欠けている場合に、後任取締役らで構成される取締役会が代表取締役を選任することは、仮処分の趣旨に抵触せず有効である。4. ただし、選任された代表取締役も仮処分存続中は権限行使を制限されるが、仮処分失効後は、有効に追認等の行為を行うことができる。
重要事実
事件番号: 昭和31(オ)614 / 裁判年月日: 昭和33年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不在者が行方不明になる際、特定の者に自己の財産管理や子女の養育等、留守中の管理一切を委託し実印を預けた場合、受託者は不在者の氏名・押印をもって訴訟代理人を選任する等の特別の権限を授与されたものと解される。 第1 事案の概要:再審被告(被上告人)は、昭和25年7月頃に行方不明となった。その際、養母D…
会社の前任取締役に対し職務執行停止・代行者選任の仮処分がなされ、職務代行者Eらが選任された。その後、前任取締役が辞任し、株主総会でDら4名が後任取締役に選任された。Dらは取締役会を開催し、Dを代表取締役に選任した。Dは代表取締役として土地の売買契約を締結したが、この時点ではまだ仮処分が取り下げられていなかった。その後、仮処分申請が取り下げられたため、Dは改めて追認ないし新たな行為を行ったが、原審はDの選任自体を無効とした。
あてはめ
1. 仮処分は事情変更の裁判がない限り失効しないため、代行者Eらの権限は存続しており、Dらの職務執行は原則として制限される。2. しかし、代表取締役の選任は仮処分の趣旨に抵触せず、実務上も後任取締役の意思に基づくべきであるから、Dを代表取締役に選任した取締役会決議は有効といえる。3. Dは仮処分存続中は代表権の行使を制約されるため、当初の売買契約は会社に効果帰属しない。4. もっとも、仮処分申請の取下げにより制約が消滅した後は、有効に選任されていた代表取締役Dとして追認等を行うことが可能である。原審がDによる追認等の余地を否定したのは、代表取締役選任の有効性を誤解したものである。
結論
後任取締役らによる代表取締役の選任は有効であり、仮処分失効後であれば、当該代表取締役が行った追認等の行為によって会社に効果が帰属する。したがって、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
会社法上の役員の地位をめぐる紛争において、仮処分と後任選任が競合した場合の規範となる。特に「代行者権限の存続(要取消裁判)」という手続的側面と、「後任による代表取締役選任の有効性」という実体法的側面を切り分けて論じる必要がある。答案上は、仮処分による職務制限の範囲を画定する際の有力な指標となる。
事件番号: 昭和34(オ)343 / 裁判年月日: 昭和36年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人として売買契約等の交渉に当たった者が、真の買受人であるか、それとも本人の代理人として行動したに過ぎないかは、証拠を総合して判断される事実認定の問題である。本判決は、交渉の衝に当たった事実があるからといって直ちにその者を真の権利者と認めることはできないとした。 第1 事案の概要:第一審参加人E…
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…
事件番号: 昭和35(オ)1321 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続財産の特別代理人によって選任された訴訟代理人は、当該相続財産の訴訟代理人であり復代理人ではない。また、特別代理人の代理権は、相続財産管理人の選任等により当然に消滅するのではなく、裁判所の解任によって消滅する。 第1 事案の概要:上告人は亡Dの相続財産に対して本訴を提起した。一審判決では当事者表…