不動産登記法一〇五条一項は、憲法二九条に違反しない。
不動産登記法一〇五条一項と憲法二九条
不動産登記法105条1項,憲法29条
判旨
仮登記に基づく本登記の申請に際し、登記上利害関係を有する第三者の承諾書等の添付を要求する規定(旧不動産登記法105条1項)は、公示制度の混乱を回避し不動産取引の安全を保護するための必要かつ合理的な制約であり、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
仮登記に基づく本登記申請において、第三者の承諾書等の添付を要件とする規定(旧不動産登記法105条1項)が、財産権を侵害し憲法29条に違反するか。
規範
財産権の行使に対し、公共の福祉を実現・維持するために法律をもって加える制約が、その立法趣旨に照らして必要かつ合理的な範囲内のものである場合には、憲法29条2項に基づき許容される。
重要事実
上告人は、所有権に関する仮登記に基づき本登記を申請しようとしたが、登記官から、登記上の利害関係人である第三者の承諾書等の添付がないことを理由に、当時の不動産登記法105条1項(現在の109条に相当)に基づき補正を指示された。上告人は、同規定が本登記申請権に不当な制約を課すものであり、憲法29条の保障する財産権を侵害し違憲であるとして、公務員の措置の違法を理由に国家賠償を請求した。
あてはめ
仮登記に基づく本登記がなされると、中間処分による第三者の権利は本登記と抵触する範囲で効力を失う。従前の実務では承諾書なしに本登記を受理していたため、登記簿上に所有名義が二重に併存する等の混乱が生じていた。改正法による本規定は、公示の混乱を避け取引の安全を保護することを目的としており、形式的審査権しか持たない登記官に代わり、実質的な利害調整を「承諾書」等の添付という形で行わせるものである。これは登記申請手続の適正化を図るための立法政策であり、仮登記名義人の権利行使に加えられたある程度の制約は、公共の福祉の実現のための必要かつ合理的な範囲にとどまる。
結論
旧不動産登記法105条1項は、憲法29条に違反しない。したがって、同条に基づく登記官の指示は適法であり、上告人の国家賠償請求は認められない。
実務上の射程
財産権の制約に関する合憲性判定において「必要かつ合理的な制約」か否かを検討する際の枠組みとして機能する。また、不動産登記法上の承諾書添付義務が、単なる事務手続ではなく実体法上の権利行使に対する合理的な調整原理であることを示す意義を持つ。
事件番号: 昭和29(オ)232 / 裁判年月日: 昭和35年6月15日 / 結論: その他
罹災都市借地借家臨時処理法第二条、第三条は憲法第二九条に違反しない。
事件番号: 昭和28(オ)254 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 破棄差戻
甲のため乙所有の建物についてなされた所有権移転請求権保全の仮登記が不法に抹消された後、善意無過失で、右建物につき、丙が乙より所有権の移転を受け、丁が丙より抵当権の設定を受けて、夫々その登記を経た場合、丙および丁は、右の抹消登記の回復登記により実質上不測の損害を受けないと認められるか、またはその損害が甲の損害と比べて顧慮…
事件番号: 昭和36(オ)1377 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において初めて予備的請求を追加・申立てることは、当事者の審級の利益を奪うものではなく、適法である。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人(被告)に対し、本件建物に関する権利を主張して訴えを提起した。第一審の判断を経て、控訴審(原審)において初めて予備的請求の申立てを行ったところ、原審…