抵当権者が債権の履行期の到来前に抵当権を実行した場合であつても、競落許可決定により競落代金が支払われて競売手続が完了した以上、競落人は有効に競落不動産の所有権を取得する。
弁済期到来前にした抵当権の実行と競落人の所有権の取得。
民法396条1項,民訴法686条,競売法2条1項,競売法32条
判旨
被担保債権の履行期前になされた抵当権の実行は違法であるが、競落代金の支払により競売手続が完了した場合には、競落人は有効に不動産の所有権を取得する。
問題の所在(論点)
被担保債権の履行期前に開始された抵当権実行(競売手続)が完了した場合、当該競売は無効となり、競落人は所有権を取得できないのか。競売手続の瑕疵が完了後の所有権移転に及ぼす影響が問題となる。
規範
抵当債権者が被担保債権の履行期到来前に抵当権の実行として競売を申し立てることは適法ではない。しかし、当該債権者が正当な債権および抵当権を有している限り、その手続が進行して競落許可決定が確定し、代金支払によって競売手続が完了した後は、競落人は目的物の所有権を取得し、競売手続の違法を理由にその効力を争うことはできない。
重要事実
上告人は、被担保債権の履行期が到来していないにもかかわらず、抵当権者によって抵当権が実行され、競売手続が行われたと主張した。当該競売手続は既に完了し、被上告人が競落代金を支払って競落許可決定が確定していた。上告人は、競売手続が違法無効であり、被上告人は所有権を取得できないとして、自己の所有権確認を求めて提訴した。
事件番号: 昭和33(オ)1036 / 裁判年月日: 昭和34年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当不動産の競売において、売却条件の瑕疵や代金の廉価性、事後の弁済猶予合意等の事情があっても、競落許可決定が確定し代金が納入された後は、所有権移転の効力は妨げられない。 第1 事案の概要:上告人は、抵当不動産の競売手続において、競落許可決定が確定し代金が納入された後に、①売却条件に瑕疵があること、…
あてはめ
本件では、履行期前の競売申立てという手続上の違法が存在する。しかし、債権者が実体法上の債権および抵当権自体は有している以上、全くの無権限者による競売ではない。一旦競売手続が進行し、競落許可決定の確定および代金支払という一連の過程を経て手続が完結した段階においては、法的安定性の観点から競落人の所有権取得を認めるべきである。したがって、手続完了後にその違法を理由に所有権の帰属を争う上告人の主張は失当である。
結論
被担保債権の履行期前に開始された競売であっても、手続が完了した以上、競落人は所有権を取得する。上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
実体上の抵当権が存在するが実行手続に瑕疵がある(履行期未到来等)場合、競売手続の完了(代金納付)によって瑕疵が治癒され、競落人の所有権取得が確定することを示す。執行抗告や執行停止等により手続中に争うべきであり、完了後の所有権確認訴訟等での遡及的無効主張を封じる射程を持つ。一方、抵当権自体が当初から存在しない(公信力がない)場合の「無効な競売」とは区別が必要である。
事件番号: 昭和43(オ)139 / 裁判年月日: 昭和43年7月9日 / 結論: 棄却
差押債権者が強制競売の申立を有効に取り下げた場合には、民訴法第六四五条第二項の準用により、右強制競売手続に記録添付されている任意競売の申立は、記録添付のときから、開始決定を受けた効力を生じ、既存の競売手続をそのまま転用して競売手続を進行できる。
事件番号: 昭和33(オ)738 / 裁判年月日: 昭和35年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国税徴収法上の公売処分において、見積価額を記載した封書を公売場所に置くべき手続規定に違反があったとしても、その違法は公売処分を当然に無効とする程度の瑕疵とはいえない。 第1 事案の概要:税務署長が行った建物の公売処分において、見積価額が69万9000円と査定されていた。しかし、当時の施行規則23条…
事件番号: 昭和45(オ)890 / 裁判年月日: 昭和46年2月25日 / 結論: 棄却
抵当権の実行のための競売開始決定が所有者に対して送達されないかしがあつても、競落許可決定が確定すれば、右かしを理由として同決定の無効を主張することは許されない。