占有の訴に対しては、本権に基づく反訴を提起することができる。
占有の訴に対して本権に基づく反訴を提起することの許否。
民法202条2項,民訴法239条
判旨
占有の訴えに対し、防御方法として本権の主張をすることは民法202条2項により禁じられるが、本権に基づく反訴を提起することは同条により禁止されない。また、占有の訴えに係る請求と本権に基づく反訴請求には牽連性が認められ、当該反訴は適法である。
問題の所在(論点)
占有の訴え(本訴)に対し、被告が本権に基づく反訴を提起することは、占有の訴えについて本権に関する理由に基づく裁判を禁じた民法202条2項に抵触し、不適法となるか。
規範
民法202条2項が占有の訴えにおいて本権に関する理由に基づいた裁判を禁じている趣旨は、占有訴訟の迅速な解決を図る点にある。したがって、本訴における防御方法として本権を主張することは許されない。しかし、反訴は本訴とは別個の独立した訴えであり、本権の存否を確定させて紛争の根本的解決を図る必要性も認められるため、本権に基づく反訴の提起自体は同条によって禁じられない。また、占有と本権は密接に関連するため、両請求間には民事訴訟法上の牽連性も認められる。
重要事実
本件では、原告(上告人)が占有の訴え(占有回収の訴え等)を提起したのに対し、被告(被上告人)が当該土地の所有権等の本権に基づき、所有権移転登記手続等の反訴を提起した。原審は、この本権に基づく反訴を適法と認め、証拠に基づいて被上告人の本権を認定し、反訴請求を認容した。これに対し、上告人は、占有の訴えに対する本権の反訴を認めることは民法202条2項に反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和39(オ)204 / 裁判年月日: 昭和39年9月25日 / 結論: 棄却
家屋賃貸借契約の解除もしくは解約の申入による賃貸借の終了を主張してその後の賃料相当の損害金を請求する場合には、審理の結果右解除もしくは解約の効力が認められず賃貸借契約が依然として存続しているものと判断されるのであれば、特段の事情のないかぎり賃料請求として右請求を維持するものと解されるから、このような場合に、賃料の支払を…
あてはめ
民法202条2項は、占有の訴えという特定の訴訟手続内での判断基準を定めたものであり、別個の訴えである反訴の提起までを制限するものではない。本件において被上告人が提起した反訴は、本訴の目的物である本件土地についての本権を主張するものであり、本訴の請求内容と密接に関連し、請求の基礎に共通性があるため、訴訟上の牽連性が認められる。したがって、本訴の防御方法としてではなく、独立した反訴として本権を裁判の基礎とすることは同条に違反しない。
結論
占有の訴えに対する本権に基づく反訴は適法であり、民法202条2項には抵触しない。本件反訴を審理・認容した原審の判断に違法はない。
実務上の射程
実務上、占有の訴えを提起された被告が、本権を有している場合に本権に基づく反訴を提起して紛争の一挙解決を図る際の根拠となる。答案作成上は、民法202条2項の「本権に関する理由に基づいて裁判することができない」という規定と、反訴の適法性(民訴法146条)を調整する際の重要判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和34(オ)975 / 裁判年月日: 昭和38年2月21日 / 結論: 棄却
原告の土地明渡請求に対し、被告が第一審において右土地について賃借権を有する旨主張し、同審が右賃借権の存在を肯認した場合に、控訴審において被告が更に反訴として右賃借権存在確認の訴を提起するには、相手方たる原告の同意を要しないものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和36(オ)707 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 棄却
本訴は係争建物が原告所有のものであることを理由にして、右建物の収去を内容とする債務名義の執行の排除を求める第三者異議の訴であり、反訴は右建物が原告(反訴被告)のものであるとして原告に対しその収去を求めるものである場合は、右反訴は右本訴の請求と牽連関係があると認めて妨げない。
事件番号: 昭和45(オ)74 / 裁判年月日: 昭和48年11月22日 / 結論: 棄却
宗教法人法二四条但書にいう善意の相手方または第三者には、善意であることにつき過失はあるが重大な過失のない者も含まれる。
事件番号: 昭和38(オ)1137 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
甲乙の共有にかかる家屋について、甲が乙の作成名義を偽造して、売買による前所有権の移転登記をした場合において、甲の共有持分に関しては、右偽造による登記の無効を生ずることはない。