宗教法人法二四条但書にいう善意の相手方または第三者には、善意であることにつき過失はあるが重大な過失のない者も含まれる。
宗教法人法二四条但書と重大な過失のない相手方または第三者
宗教法人法24条
判旨
宗教法人法23条所定の手続を欠く境内地の処分は原則無効であるが、取引の安全を考慮し、善意かつ無重過失の相手方に対しては、宗教法人はその無効を対抗できない。
問題の所在(論点)
宗教法人が法23条所定の手続を履践せずに行った境内地等の処分行為(法24条本文)につき、法人は善意の相手方に対して無効を対抗できるか。また、相手方に求められる注意義務の程度(過失の有無)が問題となる。
規範
宗教法人法24条ただし書の規定は、法人の重要財産の保全と取引の安全の保護との調和を図る趣旨である。したがって、同条本文による法律行為の無効は、善意であっても重大な過失のある相手方または第三者には対抗できるが、善意かつ無過失、または善意かつ軽過失にとどまる相手方・第三者に対しては、対抗することができない。
重要事実
上告人(宗教法人A院)の代表役員Dは、昭和33年、宗教法人法23条および法人規則所定の手続(公告等)を履践することなく、本件境内地を被上告人に対し、建物所有目的で賃貸した。上告人は、手続欠缺を理由に当該賃貸借契約の無効を主張した。被上告人は、契約締結当時、必要な手続が履践されていないことについて善意であった。
事件番号: 昭和44(オ)915 / 裁判年月日: 昭和44年11月13日 / 結論: 棄却
借地法の適用のある土地賃貸借の期間が、事実審の口頭弁論終結後約六年後に満了する場合において、貸主がその期間満了による賃貸土地の返還を求める将来の給付請求は、その請求の基礎となる権利関係を確定することができない請求権を訴訟物とするものであつて、不適法である。
あてはめ
本件において、被上告人が手続の未履践について善意であったことは原審の確定した事実である。また、原審が適法に確定した事実関係(詳細は判決文からは不明だが、取引の態様や相手方の属性等が考慮されたものと解される)に照らせば、被上告人が手続の具備を確認しなかったことについて、重大な過失があったとは認められない。したがって、被上告人は「善意かつ重過失がない」状態にあるといえる。
結論
本件賃貸借契約は宗教法人法24条本文により本来無効であるが、善意かつ無重過失の被上告人に対し、上告人はその無効を対抗することができない。したがって、賃貸借の有効を前提とした原審の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
宗教法人の重要財産処分に関する無効主張の制限を、権利外観法理に近い構成(善意・無重過失)で認めた射程の長い判例である。答案上は、法人代表者の権限濫用や代表権制限の事案と同様、取引の安全(相手方の信頼保護)をいかに図るかという文脈で、法24条ただし書を根拠に論証を展開する際に用いる。
事件番号: 昭和45(オ)60 / 裁判年月日: 昭和45年5月28日 / 結論: 棄却
一、地上権の時効取得が成立するためには、土地の継続的な使用という外形的事実が存在するほかに、その使用が地上権行使の意思にもとづくものであることが、客観的に表現されていることを要する。 二、右成立要件の立証責任は、地上権の時効取得の成立を主張する者の側にある。
事件番号: 昭和42(オ)1209 / 裁判年月日: 昭和45年4月16日 / 結論: 破棄差戻
未登記建物の所有者が、その建物につき家屋台帳上他人の所有名義で登録されていることを知りながら、これを明示または黙示に承認した場合には、その所有者は、右台帳上の名義人から権利の設定を受けた善意の第三者に対し、民法九四条二項の類推適用により、右名義人がその所有権を有しなかつたことをもつて、対抗することができない。
事件番号: 昭和45(オ)55 / 裁判年月日: 昭和48年1月26日 / 結論: 破棄差戻
不動産の交換契約の当事者甲が、右契約に基づき相手方乙の提供した不動産の占有を開始しても、甲が右契約の締結に際し詐欺を行ない、そのため右契約が乙の錯誤により無効と認められるときは、右占有は、所有の意思をもつて善意・無過失で開始されたと認めるべきではない。
事件番号: 昭和47(オ)1243 / 裁判年月日: 昭和48年4月24日 / 結論: 棄却
建物の賃借人が、賃貸人の承諾をえることなく賃借にかかる建物の主要の部分を取り毀した場合には、賃貸人は、特段の事情のないかぎり、催告を経ないで賃貸借契約を解除することができるものと解すべきである。