一 公職選挙法第二〇四条によつて、訴訟を提起できる選挙人は、その属する選挙区の選挙人に限られる。 二 所属選挙区以外の選挙区の選挙の効力について訴訟の提起をゆるさないと解しても、憲法第三二条に違反しない。
一 公職選挙法第二〇四条によつて訴訟を提起できる選挙人はその属する選挙区の選挙人に限られるか 二 所属選挙区以外の選挙区の選挙の効力について訴訟の提起をゆるさないと解することと憲法第三二条
公職選挙法204条,憲法32条
判旨
公職選挙法204条の選挙訴訟を提起できる「選挙人」とは、当該選挙区に所属する選挙人に限られる。自己の所属しない選挙区の選挙結果を争うことは、具体的権利義務に直接関係しないため、出訴権を認めなくても憲法32条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 公職選挙法204条にいう「選挙人」に、当該選挙区以外の選挙人は含まれるか(原告適格の範囲)。 2. 当該選挙区外の選挙人に提訴を認めないことは、憲法32条が保障する裁判を受ける権利を侵害するか。
規範
1. 公職選挙法204条が定める選挙訴訟の原告適格(選挙人)は、各選挙区を単位として議員を選出する制度趣旨に鑑み、当該選挙区において選挙に参加する権利を有する者に限定される。 2. 具体的権利義務に直接関係のない事項(客観的訴訟)については、法律に特別の定めがない限り、出訴を認めずとも憲法32条(裁判を受ける権利)には違反しない。
重要事実
上告人は、自らが所属する選挙区以外の他の3つの選挙区において行われた国会議員選挙の結果について、その違法を主張し、公職選挙法204条に基づき選挙無効等を求める訴えを提起した。原審は、上告人が当該選挙区の選挙人ではないことを理由に訴えを不適法としたため、上告人が憲法15条、32条、44条、47条違反等を理由に上告したもの。
事件番号: 昭和38(オ)655 / 裁判年月日: 昭和41年5月31日 / 結論: 棄却
一 公職選挙法別表第二が選挙区の選挙人の人口数に比例して改訂されていないため、議員の選出につき不均衡を生じていても、現在の程度では、憲法第一四条、第四四条、第四三条、第四七条、第一三条、第一一条、第七六条の趣旨に違反するということはできない。 二 (補足意見がある)
あてはめ
1. 公職選挙法が選挙訴訟制度を認めたのは、各選挙区を単位とする選挙において、当該選挙区の権利者に客観的適正を期させる趣旨である。憲法47条も各選挙区を一個の単位として議員を選出することを予定しており、所属外の選挙区の結果に異議を唱える権利まで保障したものではない。 2. 本件訴訟は自己の具体的権利義務に影響を及ぼすものではなく、法律の規定を超えて出訴を認めるべき憲法上の要請はない。
結論
公職選挙法204条の「選挙人」は当該選挙区の者に限られ、上告人は原告適格を欠く。本解釈は憲法32条に違反せず、上告を棄却する。
実務上の射程
選挙訴訟のような客観的訴訟における原告適格の範囲を画定した重要な判例である。司法試験においては、行政法における「法律上の利益」や「客観訴訟の法定性」を論じる際、法律の授権の範囲を解釈する際の基礎知識として活用できる。特に憲法47条が選挙区を単位とする立法裁量を認めている点と、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」の限界を確認する文脈で有用である。
事件番号: 昭和39(行ツ)29 / 裁判年月日: 昭和39年7月21日 / 結論: 棄却
選挙の管理機関以外の者の選挙運動に関する規制違反の行為は、公職選挙法第二〇五条第一項にいう選挙の規定違反にあたらない。