賃貸借終了を原因とする賃貸物件明渡等の請求をする書面に、予備的に、右賃貸借が存続しているとすれば所定の期限までに賃料の支払を催告する趣旨が含まれている場合には、右催告は、これに応じて債務者が賃料を提供しても債権者において受領する意思が認められないような特段の事情のないかぎり、有効である。
予備適催告の効力。
民法541条
判旨
賃貸人が契約の終了を主張しつつ、予備的に未払賃料の支払を催告した場合であっても、催告の内容が明確であり、債務者に不利益がない限り、その催告は有効である。
問題の所在(論点)
賃貸借契約の存否を争いながら、予備的になされた賃料支払の催告(民法541条)が有効か。特に、主位的な契約終了主張と論理的に矛盾する予備的催告の有効性が問題となる。
規範
契約の終了を主位的に主張し、明渡しを求める一方で、予備的に(契約存続を前提として)未払賃料の支払を催告することは、履行を求めている債務の内容が明白であり、債務者において不利益を受けることがない限り、催告としての効力を有する。ただし、債務者が履行を提供しても債権者がこれを受領する意思がないと認められるような特段の事情がある場合は、この限りではない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)に対し、内容証明郵便により、主位的に本件土地賃貸借契約が期間満了により終了したとして土地明渡しと損害金を請求した。これと同時に、予備的に、もし契約が存続しているとすれば、過去9年間分の未払賃料を支払うよう催告した。賃借人は、このような予備的な催告は無効であると主張して争った。
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
あてはめ
本件の予備的催告は、昭和25年以降の9年分という具体的な未払賃料額(43,200円)を明示しており、履行を求めている債務の内容は明白であって曖昧な点はない。これによって賃借人が不測の不利益を被ることは考えられない。また、賃借人がこの予備的催告に応じて賃料を提供したとしても、賃貸人がこれを受領する意思がないと認められるような特段の事情も認められない。したがって、本件催告は有効な解除権発生の要件を満たす。
結論
本件の予備的催告は有効であり、これに基づく解除権の行使は認められる。
実務上の射程
賃貸借契約の解除(民法541条)の場面で、契約終了(更新拒絶や期間満了)を主位的に主張しつつ、念のため賃料不払による解除も備えておきたい実務上のニーズを肯定する判例である。答案上は、催告の内容が「具体的・明確」であること、および「受領拒絶の特段の事情がない」ことを検討して有効性を判断する。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和38(オ)1164 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和39(オ)1050 / 裁判年月日: 昭和40年5月25日 / 結論: 棄却
賃貸建物の延滞賃料と共に賃貸借の存在しない建物占有による損害金とを不可分的に併せてした催告であつても、当該賃貸借契約解除の前提たる催告として有効である。