借地上の建物を目的物とする仮装の売買契約が締結された場合には、特別の事情がないかぎり、同建物の所有権の譲渡とともに当該借地権の譲渡をも仮装したものと認めるべきである。
建物の仮装売買とその敷地の賃借権。
民法94条,民法555条
判旨
借地上の家屋の売買が仮装された場合、特段の事情がない限り、建物の所有権のみならず敷地の賃借権の譲渡についても通謀虚偽表示(民法94条1項)が成立する。また、仮装譲受人の債権者が、債権者代位権を行使して賃借権を保全することは、当該権利関係が虚偽である以上認められない。
問題の所在(論点)
1. 建物が仮装売買された場合、明示の合意がなくても敷地賃借権の譲渡についても通謀虚偽表示が成立するか。 2. 仮装譲渡によって実体上の権利を有しない者が、当該権利を保全するために債権者代位権を行使できるか。
規範
建物の譲渡には、特段の事情がない限り、その敷地の利用権(賃借権等)の譲渡が随伴するものと解される。したがって、建物売買について通謀虚偽表示が成立する場合、明示の合意がなくとも、原則として敷地賃借権の譲渡についても民法94条1項が適用され、無効となる。また、虚偽表示に基づき外形上存在するに過ぎない権利を被保全権利として、債権者代位権(民法423条)を行使することはできない。
重要事実
上告人(控訴人)は、訴外Dから賃借していた土地上の家屋について、訴外Eと通謀して仮装の売買契約を締結した。この際、敷地賃借権の譲渡については明示の合意や取決めはなされていなかった。その後、上告人はDに対する土地賃借権を保全するためとして、Dの被上告人に対する損害賠償請求権を代位行使しようとしたが、原審は建物の仮装売買に伴い賃借権の譲渡も仮装されたものと認定し、請求を棄却した。
事件番号: 昭和37(オ)93 / 裁判年月日: 昭和38年5月24日 / 結論: 棄却
甲が乙より土地を賃借した後、右土地の所有権が乙、丙、丁と順次譲渡された場合において、丙は乙の実子であり、丁は乙、丙その他これと血族または姻族関係にある者の同族会社であつて、その営業の実態は乙の個人営業をそのまま引き継いだものであり、乙がその中心となつている等原判示のような事情(原判決理由参照)があるときは、甲の右賃借権…
あてはめ
本件では、建物について通謀虚偽表示による仮装売買が認められる。建物とその敷地利用権は処分において一体性を有するのが通常であるから、特段の事情がない限り、建物の所有権譲渡に随伴して賃借権の譲渡も仮装されたと推認するのが相当である。明示の合意がないことはこの推認を妨げない。その結果、本件賃借権の譲渡は虚偽表示として無効であり、上告人が保全すべき適法な権利(賃借権)は存在しない。したがって、要件を欠く代位権行使は認められない。
結論
建物売買の仮装に伴い賃借権の譲渡も仮装されたものと解され、有効な権利を持たない以上、債権者代位権の行使は認められない。上告棄却。
実務上の射程
建物と敷地利用権の処分の一体性を前提に、94条1項の適用範囲を拡張的に認めた実務上重要な判例である。答案では、主たる権利(建物)の瑕疵が従たる権利(賃借権)に及ぶ論理として用いる。また、債権者代位権の前提となる「被保全権利の存在」を否定する文脈でも活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
事件番号: 昭和35(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権の譲渡について賃貸人の承諾が得られない限り、民法612条に基づき、譲受人はその賃借権を賃貸人に対抗することができない。また、一時使用の賃貸借であることが確定された事案においては、借地法の適用を前提とする主張は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地の賃借権を譲り受けたと主張して賃…
事件番号: 昭和46(オ)777 / 裁判年月日: 昭和47年3月7日 / 結論: 棄却
土地賃借人が地上建物を他に仮装譲渡した場合に、右土地の賃貸人は民法九四条二項にいう第三者にあたらない。
事件番号: 昭和37(オ)995 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
一 一時使用のための土地賃借人が七〇才をこえる老人であるからといつて、これに対し右賃貸借を解除して建物収去土地明渡を求めることは、原審確定の事実関係のもとで権利濫用とはいえない。 二 借地契約にあたつて賃借人が第三者の無断建築物を買い取り右居住者を立ち退かせる約定があり、賃借人において、これを買い取つたといういきさつが…