技術士法第三九条および同法附則第三項は、憲法第二二条第一項に違反しない。
技術士法第三九条および同法附則第三項の合憲性。
技術士法39条,技術士法附則3項,憲法22条
判旨
技術士法が技術士の名称使用に試験合格を要求し、既存の従事者にもこれを適用することは、公共の福祉を維持するための必要な規制措置として憲法22条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
技術士法39条および附則3項が、試験合格を技術士の名称使用の条件とし、これを法施行前の既存の業務従事者にも適用することが、憲法22条1項の保障する職業選択(遂行)の自由を不当に侵害するか。
規範
憲法22条1項が保障する職業の自由は絶対無制限ではなく、公共の福祉の要請がある限り制限され得る。特定の業務運営の適正化や信頼性の確保を目的として、必要な知識の有無を確認するための試験制度を設け、これを既存の従事者に対しても適用することは、公共の福祉を維持するための必要な規制措置として是認される。
重要事実
上告人は、昭和24年8月以降、平穏かつ公然に技術士としての業務に従事していた。しかし、昭和32年に技術士法が施行され、同法39条および附則3項により、法定の試験に合格しなければ「技術士」の名称を使用できなくなった。上告人は、この規定が既存の業者から職業の自由を奪うものであり、憲法22条に違反すると主張して争った。
事件番号: 昭和37(あ)2317 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
弁護人の憲法第三九条違反を主張する点は、刑罰法規については憲法第三九条によつて事後法の制定は禁止されているけれども、民事法規については憲法は法律がその高価を遡及せしめることを禁止していないことは、当裁判所判例(昭和二三年(オ)第一三七号同二四年五月一八日大法廷判決、民集三巻六号一九九頁)とするところであつて、所論の宅地…
あてはめ
本件規制は、技術士の名称使用に一定の資質(試験合格)を要求することで、業務運営の適正を期し、その信頼度を高めることを目的としている。このような措置は、宅地建物取引員制度に関する先例(最大判昭37.10.24)と同様、公共の福祉を維持するために必要な規制である。また、かかる規制は業務の適正を担保する趣旨から、新規参入者のみならず既存の従事者に対しても等しく適用する必要性があるといえる。したがって、既存の従事者が名称使用を制限されることになっても、それは許容されるべき合理的な制限であると解される。
結論
技術士法39条および同法附則3項は憲法22条1項に違反しない。したがって、上告人の主張は採用できず、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
職業の自由に対する「消極目的規制」や「積極目的規制」といった二重の基準論が確立する前の判例であるが、資格制度や名称独占の導入に伴う既存業者への遡及的適用(経過措置の妥当性)が争われる場面で、規制の必要性と公共の福祉による正当化を肯定する一材料として活用できる。
事件番号: 昭和37(テ)27 / 裁判年月日: 昭和38年1月25日 / 結論: 棄却
民訴法第四〇九条ノ二第一項は、憲法第三二条に違反しない。