医薬品の販売業につき登録制を定めた旧薬事法(昭和三五年法律第一四五号による改正前の同二三年法律第一九七号)第二九条第一項は、憲法第二二条第一項、第二五条に違反しない。
医薬品の販売業につき登録制を定めた旧薬事法(昭和三五年法律第一四五号による改正前の同二三年法律第一九七号)第二九条第一項の合憲性。
旧薬事法(昭和23年法律197号)29条1項,旧薬事法(昭和23年法律197号)52条,旧薬事法(昭和23年法律197号)56条,憲法22条1項,憲法25条
判旨
医薬品販売業の登録制を定めた旧薬事法29条1項は、公衆の保健衛生上の危害を未然に防止し、公共の福祉を確保するための合理的な規制である。したがって、同規定は憲法22条1項(職業選択の自由)および憲法25条に違反しない。
問題の所在(論点)
旧薬事法29条1項が、医薬品販売業を営もうとする者に対し一律に登録を義務付け、一定の基準を満たさない者の営業を制限していることが、憲法22条1項の職業選択の自由を侵害し違憲とならないか。また、憲法25条等に照らして正当化されるか。
規範
職業選択の自由(憲法22条1項)は、公共の福祉に反しない限り認められる。国民の生命・健康に直接影響を及ぼすような業務について、有害な結果を招来するおそれがある場合には、その発生を未然に防止するために、一定の資格・設備・施設等の基準を設けて営業を制限する登録制度(許可制に近い性質)を設けることは、公共の福祉を確保するための合理的な制度として許容される。
重要事実
被告人は、旧薬事法2条4項所定の医薬品に該当する物質を販売していた。しかし、同法29条1項の義務づける販売業の登録を受けずに医薬品の販売営業を行ったとして、同法違反の罪に問われた。被告人は、当該登録制が職業選択の自由を侵害し、憲法22条1項等に違反する無効な規定であると主張して争った。
あてはめ
医薬品は本来人の健康に有益なものであるが、販売業を自由に放任すれば、非衛生的条件下での保管による変質や、知識経験を欠く者による不適切な用法指導が行われる可能性がある。これにより公衆の保健衛生上有害な結果を招来するおそれがある。旧薬事法29条1項は、一定の知識経験と衛生的な設備・施設を備える者のみに登録を認めることで、これらの危害を未然に防止しようとするものである。これは公共の福祉を確保するための必要かつ合理的な制度であり、憲法25条の生存権保障の要請にも適合する。
結論
旧薬事法29条1項は、憲法22条1項および25条に違反しない。したがって、登録を受けずに営業した被告人の処罰は正当である。
実務上の射程
消極目的規制(国民の生命・健康等に対する安全確保)における許可制・登録制の合憲性を認めた重要判例である。後の薬局距離制限訴訟(最大判昭50.4.30)が示した厳格な合理性の基準が確立される前の判断ではあるが、生命・健康に関わる「強力な規制」の必要性を論じる際の基礎となる。答案では、規制の目的が保健衛生上の危害防止(消極目的)にあることを明示した上で、あてはめの段階で本判決の「危害発生のおそれ」の論理を援用できる。
事件番号: 昭和28(あ)664 / 裁判年月日: 昭和29年8月31日 / 結論: 棄却
一 商標法第三四条第一号、第三号の規定は憲法第二五条に違反しない。 二 商標法第三四条第一号、第三号の規定は職業選択の自由を保障した憲法第二二条と何等関係はない。
事件番号: 昭和28(あ)4329 / 裁判年月日: 昭和31年6月13日 / 結論: 棄却
一 覚せい剤の譲渡、譲受の制限および禁止に関する薬事法第四一条第七号、第四四条第七号、第五六条、覚せい剤取締法第一七条第三項、第四一条第一項第四号は、憲法第一三条に違反しない。 (裁判官栗山茂の少数意見) 被告人が当審で初めて適用罰条の違憲性を主張しても、それは刑訴四〇五条にいう、高等裁判所がした判決に対し憲法の解釈に…
事件番号: 昭和26(れ)2495 / 裁判年月日: 昭和27年8月29日 / 結論: その他
たとえ医薬品の販売行為は一回であつても、それが業としてなされたものと認められる場合は、旧薬事法二三条一項に違反するものというべきである。