一 許可を受けた医療用具製造業者から、各容器に約三〇本ないし一〇〇本宛収納して封じられたいわゆる円皮鍼(判文参照)を購入したうえ、一般の需要に応ずるため、これを一本宛右各容器内から取り出し、他の容器内に数本宛収納して封じるという作業を行つた被告人の行為(原判文参照)は、薬事法一二条一項所定の医療用具の小分け行為にあたる。 二 本件円皮鍼を無許可で業として小分けした行為(判文参照)につき薬事法一二条一項の規定を、これにより小分けされた円皮鍼を販売した本件行為につき同法六四条、五五条二項の規定を、それぞれ適用しても、憲法二二条一項に違反するものではない。
一 薬事法一二条一項所定の医療用具の小分け行為にあたるとされた事例 二 薬事法一二条一項、六四条、五五条二項の各規定を適用しても憲法二二条一項に違反しないとされた事例
薬事法12条1項,薬事法55条,薬事法64条,憲法22条1項
判旨
医療用具の「小分け」行為を無許可で行うことを禁止する薬事法の規定は、保健衛生上の危害を防止するための必要かつ合理的な制約であり、憲法22条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
医療用具の小分け行為を規制し、無許可での営業を禁止する薬事法12条1項、55条2項、64条等の規定が、憲法22条1項が保障する職業選択の自由を侵害し違憲ではないか。
規範
職業の自由に対する制約は、公共の福祉の要請に基づき、目的が正当であり、その目的を達成するために必要かつ合理的な範囲内であれば憲法22条1項に適合する。特に国民の生命・健康に関わる保健衛生上の目的による制約は、その必要性と合理性が認められやすい。
重要事実
被告人は、許可を受けた製造業者から、1容器に30本から100本程度収納された医療用具(円皮鍼)を購入した。これを一般需要に応じるため、無許可かつ業として、元の容器から取り出し、別の容器に数本ずつ小分けして収納し直した。この行為が薬事法12条1項等の無許可製造(小分け)に該当するとして起訴されたため、被告人は当該規定が憲法22条1項に違反すると主張した。
あてはめ
医療用具である円皮鍼を業として小分けする行為を自由に放任すれば、作業過程における円皮鍼の汚染や劣化を招き、公衆に対する保健衛生上の有害な結果を招来する具体的おそれがある。薬事法の目的は医療用具の品質、有効性および安全性の確保にあり(同法1条)、小分け行為を許可制とすることは、この正当な目的を達成するための手段として必要かつ合理的である。したがって、薬局距離制限事件判決(最大判昭50.4.30)等の趣旨に照らしても、許容される消極的目的による規制の範囲内にあるといえる。
結論
本件規制は、保健衛生上の危害防止という正当な目的のための必要かつ合理的な制約であり、憲法22条1項に違反しない。
実務上の射程
薬事法上の「製造」には小分け行為も含まれることを前提とした上で、職業の自由(消極的目的規制)の合憲性判定枠組みを示す事案として重要。答案では、国民の生命・健康に関わる分野において、国家が介入することの合理性を基礎づける際に引用する。
事件番号: 昭和53(あ)1113 / 裁判年月日: 昭和54年3月22日 / 結論: 棄却
一 薬事法一二条が製造業の許可を受けないで業として製造することを禁じている医療用具で同法二条四項、同法施行令一条別表第一の三二に定めている「医療用吸引器」は、陰圧を発生持続させ、その吸引力により人(若しくは動物)の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又は人(若しくは動物)の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすこ…
事件番号: 昭和28(あ)4329 / 裁判年月日: 昭和31年6月13日 / 結論: 棄却
一 覚せい剤の譲渡、譲受の制限および禁止に関する薬事法第四一条第七号、第四四条第七号、第五六条、覚せい剤取締法第一七条第三項、第四一条第一項第四号は、憲法第一三条に違反しない。 (裁判官栗山茂の少数意見) 被告人が当審で初めて適用罰条の違憲性を主張しても、それは刑訴四〇五条にいう、高等裁判所がした判決に対し憲法の解釈に…