一 薬事法一二条が製造業の許可を受けないで業として製造することを禁じている医療用具で同法二条四項、同法施行令一条別表第一の三二に定めている「医療用吸引器」は、陰圧を発生持続させ、その吸引力により人(若しくは動物)の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること又は人(若しくは動物)の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことを目的とする器具器械であれば足り、必ずしも電動力等の強力な動力装置を備えているもの又は専ら手術に用いられるものに限定されず、また、人の健康に害を及ぼす虞が具体的に認められるものであることを要しない。 二 吸角を体表に密着させ手動ポンプの力によつて右吸角内の気圧を減圧し数分間持続して、その吸引力により非観血法のみならず観血法による疾病の治療に使用し、又は人体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことを目的とする本件吸圧器は、薬事法一二条にいう医療用具で同法二条四項、同法施行令一条別表第一の三二に定める「医療用吸引器」にあたる。
一 薬事法一二条にいう医療用具で同法二条四項、同法施行令一条別表第一の三二に定める「医療用吸引器」の意義 二 薬事法一二条にいう医療用具で同法二条四項、同法施行令一条別表第一の三二に定める「医療用吸引器」にあたるとされた事例
薬事法2条4項,薬事法12条1項,薬事法施行令1条別表第1の32
判旨
薬事法(現・薬機法)上の「医療用吸引器」とは、陰圧を発生持続させ、その吸引力により疾病の診断・治療・予防に使用されること、または身体の構造・機能に影響を及ぼすことを目的とする器具をいい、動力装置の有無や具体的危害の発生の恐れを問わない。
問題の所在(論点)
薬事法上の「医療用吸引器」の定義およびその範囲(手動式の吸圧器が、同法2条4項および施行令の別表に定める「医療用吸引器」に該当するか)。
規範
薬事法にいう「医療用吸引器」は、陰圧を発生持続させ、その吸引力により、①人(若しくは動物)の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は②人(若しくは動物)の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことを目的とする器具器械であれば足りる。したがって、必ずしも電動力等の強力な動力装置を備えているものや専ら手術に用いられるものに限定されず、また、人の健康に害を及ぼす虞が具体的に認められるものであることも要しない。
重要事実
被告人は、プラスチック製吸角を体表に密着させ、手動ポンプの力によって吸角内の気圧を50水銀柱センチメートル以上減圧し、かつ数分間持続させることができる「吸圧器」を製造・販売した。被告人は、厚生大臣(当時)の許可を受けずに本件器具を業として製造・販売したことから、無許可製造(薬事法12条1項違反等)の罪に問われた。被告人側は、本件器具が同法にいう「医療用吸引器」に該当しないと主張して争った。
あてはめ
本件吸圧器は、手動ポンプにより50水銀柱センチメートル以上の減圧状態を数分間持続させることが可能であり、この吸引力によって非観血法のみならず観血法による疾病の治療に使用し、又は人体の構造・機能に影響を及ぼすことを目的とする器具であると認められる。したがって、電動装置を有しない手動式の器具であっても、発生した陰圧を利用して治療等に用いる目的がある以上、規範に示した「医療用吸引器」の定義を充足するといえる。
結論
本件吸圧器は「医療用吸引器」に該当する。したがって、無許可でこれを業として製造・販売した被告人の行為は、薬事法違反を構成する。
実務上の射程
行政法・刑法上の規制対象となる「医療機器」の解釈において、条文上の定義を文言通りに解釈し、構造(動力の有無)や具体的な危険性の有無によって限定解釈すべきではないことを示した。薬事規制の網羅性を維持する判断として、実務上、類似の健康器具が医療機器に該当するかを検討する際の基準となる。
事件番号: 昭和58(あ)93 / 裁判年月日: 昭和59年6月19日 / 結論: 棄却
一 許可を受けた医療用具製造業者から、各容器に約三〇本ないし一〇〇本宛収納して封じられたいわゆる円皮鍼(判文参照)を購入したうえ、一般の需要に応ずるため、これを一本宛右各容器内から取り出し、他の容器内に数本宛収納して封じるという作業を行つた被告人の行為(原判文参照)は、薬事法一二条一項所定の医療用具の小分け行為にあたる…