一 薬事法二条一項二号にいう「医薬品」とは、その物の成分、形状、名称、その物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演述・宣伝などを総合して、その物が通常人の理解において「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている」と認められるものをいい、これが客観的に薬理作用を有するものであるか否かを問わない。このように解しても、憲法三一条、二一条一項、二二条一項に違反しない。 二 その名称、形状が一般の医薬品に類似している本体「つかれず」及び「つかれず粒」(いずれもクエン酸又はクエン酸ナトリウムを主成分とする白色粉末又は錠剤)は、たとえその主成分が、一般に食品として通用しているレモン酢や梅酢のそれと同一であつて、人体に対し有益無害なものであるとしても、これを、高血圧、糖尿病、低血圧、貧血、リユウマチ等に良く効く旨その効能効果を演述・宣伝して販売したときは、薬事法二条一項二号にいう「医薬品」にあたる。
一 薬事法二条一項二号にいう「医薬品」の意義と憲法三一条、二一条一項、二二条一項 二 薬事法二条一項二号にいう「医薬品」にあたるとされた事例
薬事法2条1項,薬事法24条1項,薬事法84条5号,憲法21条1項,憲法22条1項,憲法31条
判旨
薬事法上の「医薬品」とは、客観的な薬理作用の有無を問わず、その成分、形状、表示された効能、販売方法等を総合し、通常人の理解において疾病の治療等の目的と認められる物をいう。
問題の所在(論点)
成分自体は人体に有益無害な食品と同等の物質であっても、その販売形態や宣伝内容によって、薬事法2条1項2号に定める「医薬品」に該当するか。
規範
薬事法2条1項2号にいう「医薬品」とは、その物の成分、形状、名称、表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演述・宣伝等を総合して、その物が通常人の理解において「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている」と認められる物をいう。これは、医薬品の使用による国民の健康への積極的・消極的弊害(適切な医療を受ける機会の喪失等)を未然に防止する趣旨に基づく。したがって、当該物質が客観的に薬理作用を有するものであるか否かは問わない。
重要事実
被告人Aらは、クエン酸等を主成分とする粉末(「つかれず」)や錠剤(「つかれず粒」)を、都知事の許可なく販売した。当該製品の名称や形状は一般の医薬品に類似しており、販売に際しては「高血圧、糖尿病、リウマチ等に良く効く」等の効能効果をパンフレット等で演述・宣伝していた。主成分自体は食品(レモン酢等)と同様の有益無害なものであった。
あてはめ
本件製品は、名称や形状が一般の医薬品と類似しており、通常人が「くすり」的なものとして受け取る外見を呈している。また、宣伝において「糖尿病は酢で治し易い」等の極端な薬効を強調し、特定の疾病に対し現代医学は無力だが本件製品は万能であるかのような演述を行っている。このような販売方法は、たとえ成分が有益無害なクエン酸であっても、標榜された薬効に対する通常人の不当な過信を招き、適切な医療機会を失わせる等の消極的弊害を生じさせるおそれがある。したがって、通常人の理解において、疾病の治療等を目的とする「医薬品」に当たると認められる。
結論
本件「つかれず」等は薬事法上の医薬品に該当し、無許可販売は同法違反となる。上告棄却。
実務上の射程
「目的物」としての医薬品概念を、客観的性質(薬理作用)ではなく、主観的・外形的要素(宣伝・形状等)から判断する枠組みを確立した。健康食品が「医薬品」として規制される際のリーディングケースであり、答案上は、国民の健康保護という立法趣旨から、客観的効能の有無にかかわらず「通常人の理解」を基準とすべき点を論述する際に用いる。
事件番号: 昭和41(あ)1144 / 裁判年月日: 昭和41年10月27日 / 結論: 棄却
一 薬事法第二四条第一項にいう「業として、医薬品を販売し」とは、反覆継続して医薬品を不特定又は多数の者に対して為す意思の下に有償譲渡する行為があれば足り、その販売の回数の多少又は店舗の開設の有無等を問わない。 二 同条項にいう「貯蔵し」とは、一般観覧に供することなくある場所に継続して存置し所持する行為をいうものと解すべ…