町長が町条例に基づき、過員整理の目的で行なつた町職員に対する待命処分は、五五歳以上の高齢者であることを一応の基準としたうえ、その該当者につきさらに勤務成績等を考慮してなされたものであるときは、憲法第一四条第一項および地方公務員法第一三条に違反しない。
高齢者であることを一応の基準としてなされた地方公務員の待命処分と憲法第一四条第一項および地方公務員法第一三条。
憲法14条,地方公務員法13条,昭和29年法律192号地方公務員法の一部を改正する法律附則3項
判旨
憲法14条1項の「社会的身分」とは人が社会で占める継続的な地位を指し、高齢であることはこれに含まれないが、同条は例示列挙を超えた合理的理由のない差別を禁止する。定員整理のための待命処分において、年齢を基準としつつ勤務成績等を総合考慮することは任命権者の合理的な裁量の範囲内であり、平等原則に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 年齢(高齢であること)が憲法14条1項の「社会的身分」に該当するか。2. 定員整理において年齢を基準として待命処分を行うことが、合理的理由のない差別に当たり平等原則に違反するか。
規範
憲法14条1項及び地方公務員法13条の「社会的身分」とは、人が社会において占める継続的な地位をいう。また、同条に列挙された事由は例示的なものであり、それ以外の事由による差別も禁止されるが、同条は絶対的な平等を保障するものではなく、事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱をすることは許容される。公務員の過員整理に伴う待命処分の対象者の選定は、任命権者が勤務成績や勤務年数等の諸般の事実に基づき公正に判断すべきものであり、適正な裁量に委ねられている。
重要事実
町村合併に伴い定員を超過したa町の町長が、職員整理のため待命条例に基づき待命処分を行った。町長は「55歳以上」という年齢を一つの基準とし、後進に道を開く目的で対象者を検討した。当時66歳で建設課長であった上告人は、この年齢基準に該当し、かつ勤務成績が良好でない等の事情も考慮された結果、その意に反して臨時待命を命じられた。上告人は、高齢を理由とする差別は「社会的身分」による差別に当たり、平等原則に違反すると主張した。
事件番号: 昭和37(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和39年5月27日 / 結論: 棄却
町条例所定の定数をこえてなされた町吏員の任用が違法であるとしても、それが特定の町吏員の整理を目的としてことさら過員を生じさせるために行なわれたものでないと認めうる等原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、その任用の結果生じた過員を整理するための町吏員の待命処分は、違法でない。
あてはめ
まず、高齢であることは「人が社会において占める継続的な地位」とはいえないため、社会的身分には当たらない。次に、憲法14条1項は例示以外の差別も禁止するが、本件待命処分は定員超過という客観的事態への対応として行われており、行政上の必要性がある。町長が「55歳以上」という基準を用いたのは、定員整理の公正な実施を期すための一応の指標であり、単に年齢のみで決するのではなく、上告人の勤務成績が良好でないといった個別の事情も併せて考慮している。このような判断は、任命権者に与えられた適正な裁量の範囲を逸脱するものとは認められない。
結論
本件待命処分は、事柄の性質に即応した合理的な理由に基づく差別的取扱といえるため、憲法14条1項及び地方公務員法13条に違反しない。
実務上の射程
14条1項の「例示列挙説」を明示した重要判例である。答案上は、まず「社会的身分」の定義(継続的地位)を論じて該当性を否定しつつ、直ちに合憲とするのではなく、例示列挙以外の事由(年齢等)についても「合理的区別」といえるかという二段構えで論ずる際に用いる。裁量権の行使が平等の観点から制約される場面の枠組みとしても活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)1187 / 裁判年月日: 昭和36年3月28日 / 結論: 棄却
地方公務員法第四六条に基く措置要求の申立に対する人事委員会の判定は、取消訴訟の対象となる行政処分にあたる。
事件番号: 昭和39(行ツ)64 / 裁判年月日: 昭和40年12月10日 / 結論: 棄却
公務員を分限免職にするかどうかは、行政庁の自由裁量に属する。