北海道旧土人保護法により無償下付を受けた土地であつても、自作農創設特別措置法による買収は違法ではない。
北海道旧土人保護法により無償下付を受けた土地の自作農創設特別措置法による買収の適否
自作農創設特別措置法3条1項,自作農創設特別措置法5条、北海道旧土人保護法1条、2条
判旨
北海道旧土人保護法に基づき無償で下付された土地であっても、自作農創設特別措置法の目的(自作農の急速かつ広汎な創設)に照らせば、同法による買収対象から除外される理由はない。同法5条の除外規定に該当しない以上、旧土人保護法による譲渡制限は公権力の行使による買収を妨げるものではない。
問題の所在(論点)
北海道旧土人保護法に基づき無償下付され、譲渡制限が付された土地が、自創法1条・5条等の規定に基づき買収対象に含まれるか。旧土人保護法が自創法の特別法として優先適用され、買収を拒めるかが問題となった。
規範
法目的の達成のために他の一般法益との調整が必要な場合は、明文の除外規定(自作農創設特別措置法5条等)に基づき判断される。特定の保護法が所有者の自由な譲渡を禁じている場合であっても、それが無償下付等の特殊な事情に基づく私法的処分の制限であれば、公権力の行使による買収という公法上の目的遂行を制限する根拠とはならない。
重要事実
北海道旧土人保護法に基づき無償で土地の下付を受けた者が、その土地を自作農創設特別措置法(以下「自創法」)に基づき国に買収された。上告人は、当該土地がアイヌ民族の保護を目的とする旧土人保護法によって下付され、譲渡制限が付されていることから、自創法の特別法として買収対象から除外されるべきであると主張して争った。
事件番号: 昭和28(オ)1266 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
農地所有権の移転後、移転登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた農地買収処分は、当然無効と解すべきではない
あてはめ
自創法1条は、耕作者の地位安定と自作農の広汎な創設を目的としており、不在地主等の小作地を原則として買収の対象としている。同法5条は買収除外対象を限定的に列挙しているが、旧土人保護法に基づく下付農地はこれに含まれていない。旧土人保護法が譲渡を禁じている趣旨は、無償下付された土地の散逸を防ぐ私法上の処分制限にあり、自創法という公法上の目的に基づく買収(公権力の行使)までも制限するものではないと解される。
結論
北海道旧土人保護法の下付地であっても、自創法に基づく買収対象となる。旧土人保護法は自創法の特別法とはいえず、買収処分は適法である。
実務上の射程
特別の保護目的を持つ法律(保護法等)と、一般的・強行的な社会改革法(自創法等)が衝突した場合、除外規定の有無とそれぞれの立法趣旨を比較考量して決すべきであることを示している。行政法における公法と私法の交錯や、特別法・一般法の関係を論ずる際の参考となる。
事件番号: 昭和39(行ツ)21 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号により買収除外の指定を受けた区域内にある小作地であつても、これを同法第三条第一項第二号にいう在村地主の保有小作面積に算入することは許される。
事件番号: 昭和38(オ)1065 / 裁判年月日: 昭和40年8月2日 / 結論: 棄却
一 地主所有の果樹が生立する果樹園であつても、自作農創設特別措置法による農地買収の対象となる。 二 自作農創設特別措置法第三条第五項第二号によるいわゆる仮装自作地の買収については、同条第一項第二号、第三号所定の買収面積の制限を受けない。
事件番号: 昭和38(オ)1308 / 裁判年月日: 昭和40年7月16日 / 結論: 棄却
農地の譲渡について農地調整法による知事の認可のあつたことは、自作農創設特別措置法第六条の二によつて右農地に対する遡及買収をすることを妨げるものではない。
事件番号: 昭和41(行ツ)41 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 破棄差戻
耕地整理の施行により大略一反歩ずつに整然と区画されて後、都市計画法による都市計画区域に編入された土地を対象とする農地買収処分の無効確認訴訟において、旧所有者である原告から、右土地が大都市近郊の住宅地として開発され、戦前すでに風致地区に指定された旨の主張があり、また判示のように、右土地の耕作が必ずしも正当な権原に基づくも…