選挙長は、立候補届出または候補者推薦届出の受理に際し、文書につき形式的な審査をしなければならないが、候補者が被選挙権を有するか否か等実質的な審査をする権限を有しない。
立候補届出または候補者推薦届出についての選挙長の審査権限。
公職選挙法86条1項,公職選挙法86条2項
判旨
選挙長は、立候補届出等の受理に際しては届出文書の形式的な審査権限のみを有し、被選挙権の有無などの実質的な審査をする権限は有しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法に基づき、選挙長が立候補届出を受理する際、候補者の被選挙権の有無について実質的な審査を行う権限を有するか。また、実質的な欠格事由がある者の届出を受理して選挙を執行することは違法か。
規範
公職選挙法の規定に照らせば、選挙長は立候補届出および推薦届出の受理にあたっては、届出文書につき形式的な審査をしなければならない。一方で、候補者となる者が被選挙権を有するか否か等の実質的な内容については審査権限を有さず、その決定は、開票に際し、開票会や選挙会において立会人の意見を聴いてなされるべきである。
重要事実
被選挙権を有しない訴外Dについて立候補推薦届出がなされた際、選挙長はその届出を受理し、Dを候補者の一人として選挙を執行した。これに対し、被選挙権のない者の届出を受理して選挙を執行したことが違法であるとして争われた。
事件番号: 昭和35(オ)1467 / 裁判年月日: 昭和36年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定」とは主として選挙の管理執行に関する規定を指し、当選人決定の際の被選挙権の有無の判断に誤りがある場合は、選挙無効の訴えの対象にはならない。 第1 事案の概要:本件選挙において、選挙会は訴外Dに被選挙権がないものと判断し、同人を当選人と定めなかった。上告人は、…
あてはめ
本件において、選挙長は届出文書の形式的な不備の有無を確認して受理しており、これは公職選挙法上の形式的審査権の範囲内である。被選挙権の有無は、届出段階の審査対象ではなく、後の開票・選挙会等のプロセスで判断されるべき事柄であるため、被選挙権のない者の届出を受理したとしても、受理手続自体に違法性は認められない。
結論
選挙長の実質的審査権を否定し、被選挙権のないDの届出を受理して選挙を執行したことに違法はない。
実務上の射程
行政庁の届出受理における審査権限の範囲(形式的審査か実質的審査か)が問題となる場面で、法律の趣旨・構造から審査権限を限定する際の論理として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1286 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙の投票において、特定の候補者の氏名が正確に記載されていない場合であっても、諸般の事情を考慮して当該候補者に対する投票であると合理的に認められるときは、これを有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:本件は選挙における投票の効力が争われた事案である。係争の投票6票について、特定の候補者Bの氏…
事件番号: 昭和45(行ツ)56 / 裁判年月日: 昭和46年4月15日 / 結論: 破棄自判
不在者投票を投票所の閉鎖時刻までに投票管理者に送致せず、違法にその効力を失わしめたことは、選挙無効の原因となりうる。
事件番号: 昭和27(オ)859 / 裁判年月日: 昭和28年5月15日 / 結論: その他
一 村長選挙に立候補するため、村議会議員を辞職する旨村役場において村議会書記に口頭をもつて申し出た場合、その申出は辞職申出としての効力を有する。 二 公職選挙法八九条によると公務員は原則として在職のまま公職の候補者となることはできないのであるが、それにもかかわらず公務員が在職のまま立候補の届出をした場合に選挙長はその届…
事件番号: 昭和36(オ)586 / 裁判年月日: 昭和36年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙事務の手続に違法がある場合でも、投票箱の保管状況等の諸事情を総合考慮し、当該違法が選挙の結果に異動を及ぼす虞がないと認められるときは、選挙の効力は否定されない。 第1 事案の概要:ある選挙において、選挙長が開票事務を一時中止した。その際、投票箱の封印および旋錠が不十分な状態であったという手続上…