地上権ないし賃借権の設定された土地の上の建物についてなされた登記が、錯誤または遺漏により、建物所在地番の表示において実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載とあいまち、その登記の表示全体において、当該建物の同一性を認識できる程度の軽微な相違であるような場合には、「建物保護ニ関スル法律」第一条第一項にいう「登記シタル建物ヲ有スル」場合にあたるものと解すべきである。
建物の登記が所在地番の表示において実際と相違する場合と「建物保護ニ関スル法律」第一条第一項。
建物保護ニ関スル法律1条
判旨
建物保護法1条1項(現・借地借家法10条1項)の「登記シタル建物」とは、建物登記の所在地番が実際と多少相違しても、登記全体から建物の同一性を認識し得る程度の軽微な誤りであれば、対抗力を認めるべきである。
問題の所在(論点)
借地上の建物の登記について、所在地番の表示が実際と相違する場合、建物保護法1条1項(現・借地借家法10条1項)による借地権の対抗力が認められるか。
規範
建物保護法1条1項(現・借地借家法10条1項)が建物の登記をもって借地権の対抗力を認めた趣旨は、借地上の登記ある建物が借地権の存在を推知させる公示機能を果たす点にある。したがって、建物の登記における所在地番の表示が実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載と相まって、登記の表示全体において当該建物の同一性を認識し得る程度の軽微な誤りであり、かつ、容易に更正登記ができるような場合には、同条にいう「登記シタル建物」にあたり、対抗力を有する。
重要事実
賃借人(上告人)は、江東区a町b丁目c番地の土地を賃借し、その地上に居宅を所有していた。しかし、当該建物の登記簿上の所在地番は、錯誤により隣地の「d番地」として登記されていた。その後、土地賃貸人がc番地の土地を第三者(被上告人)に売却し、被上告人が上告人に対して建物の収去等を求めて提訴した。
事件番号: 昭和44(オ)1030 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
賃借権の設定された土地の上の建物についてなされた登記が、錯誤または遺漏により、建物所在地番の表示において実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載とあいまち、その登記の表示全体において、当該建物の同一性を認識できる程度の軽微な誤りであり、ことにたやすく更正登記ができるような場合には、建物保護に関する法律…
あてはめ
土地の第三取得者は、通常、現地を検分して建物の存在を確認し、借地権等の利用権原を推知し得る。本件において、登記上の所在地番が「d番地」であっても、現実に「c番地」に存在する建物の種類・構造・床面積等の記載が実際と一致し、登記全体から当該建物の同一性が認識できるのであれば、公示としての機能は果たされている。このような軽微な誤りは容易に更正登記が可能であり、これを理由に対抗力を否定することは、借地権者の保護という立法趣旨に反し、第三者の利益を不当に害するともいえない。原審は地番の相違のみを理由に対抗力を否定したが、同一性認識の有無を審理すべきであった。
結論
地番の相違が同一性を認識し得る程度の軽微な誤りであれば、更正登記前であっても対抗力が認められる。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
借地借家法10条1項の対抗要件の具備を検討する際、登記の瑕疵が「社会通念上の同一性」を損なわない程度か否かを判断する基準として用いる。実務上は、地番が隣接しているか、建物外観(構造・面積)の合致度が高いか等が判断要素となる。
事件番号: 昭和42(オ)954 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: その他
土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地賃借権を時効により取得することができる。
事件番号: 昭和34(オ)1237 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
某町a番地の土地が同番のb、c等に分筆され、その旨の登記を経た後、a番のb、cの両土地を賃借した借地人が、両土地上に建築した建物につき、所在地番を旧番地たるa番と表示して、所有権保存登記をしたときは、右登記をもつて、a番のb、cの借地権を第三者に対抗することはできない。
事件番号: 昭和29(オ)546 / 裁判年月日: 昭和31年7月17日 / 結論: 棄却
建築基準法第五五条の適用上建物の建設が不可能な程度に狭い借地でも、これにつき罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用がないものと解すべきでない。
事件番号: 昭和28(オ)294 / 裁判年月日: 昭和30年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の保存登記において所在地の地番の表示に誤記があっても、当該建物につきなされた登記と認め得る限り、その保存登記は有効である。また、有効な登記であればこそ、更正登記により当初から更正後の内容で有効な登記が存在したものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は、目的建物の所有権保存登記を備えていた。…