一 借地人が借地上に店舗兼住宅用建物を所有してこれを自己において使用している場合には、地代家賃統制令第二三条第二項但書の適用はなく、その敷地の地代については統制は解除されているものと解すべきである。 二 原判決認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、借地契約解除の前提としてした延滞賃料八〇〇〇円の支払を催告するにつき期限を二日後と定めることは、相当と認むべきである。
一 店舗兼住宅として自ら使用する所有建物の敷地と地代家賃統制令第二三条第二項但書の適用の有無 二 契約解除の前途たる延滞賃料の催告期間が相当と認められた事例
地代家賃統制令23条2項,地代家賃統制令3項,同令施行規則10条,同令施行規則11条,民法541条
判旨
賃料増額の合意が統制法令により一時的に無効とされても、統制解除後に当事者が異議なく増額賃料の支払を継続した場合は、黙示の合意に基づき有効な賃料額として成立する。
問題の所在(論点)
地代家賃統制令の解除後において、統制期間中になされた統制額を超える賃料増額合意の効力が、解除後の履行状況によって認められるか。また、それに基づく催告・解除が有効か。
規範
法令による価格統制が解除された場合、統制期間中に合意された金額が統制額を超えていたために無効であったとしても、統制解除後に当事者がその金額を承認し、長期にわたり異議なく履行を継続したときは、解除後の期間について当該金額によるべき旨の黙示の合意が成立したものと解するのが相当である。
重要事実
賃貸人Dと賃借人Aは、昭和23年12月1日以降、賃料を月額800円に増額する合意をしたが、当時は地代家賃統制令の適用があった。統制解除後、Aの代理人である妻Eは、統制解除前と同様に増額された月額800円の賃料を承認し、Dに対して2年以上の期間にわたって異議なく支払い続けてきた。その後、D側が賃料不払を理由に催告・解除を行ったところ、A側が賃料額の有効性や催告期間の不相当、権利濫用を主張して争った。
あてはめ
本件では、賃借人の代理人が統制解除後も「統制解除前と変わることなく」増額された賃料を承認していた事実がある。さらに、2年以上の長期にわたり「異議なくこれを支払い続けてきた」事実は、従前合意された賃料額を維持する意思の継続を強く推認させる。したがって、統制解除後も暗黙のうちに従前通り増額された賃料によるべきとの合意が成立したと認められる。この有効な賃料額に基づき、相当な猶予期間を定めてなされた催告及び解除は、権利濫用にも当たらない。
結論
増額賃料に関する黙示の合意の成立を認め、当該賃料に基づく催告及び解除を有効とした原審の判断を支持し、上告を棄却した。
実務上の射程
契約内容が強行法規(統制法等)で制限される場合でも、規制撤廃後の追認的行動(長期の履行継続)により、実質的に当初の合意内容が有効化されるとする。答案上は、賃料増額の有効性や、黙示の合意の認定手法(継続的支払という事実からの推認)を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)1060 / 裁判年月日: 昭和37年4月10日 / 結論: 棄却
統制額の修正に伴い当然これを賃料額とする旨の特約または増減請求の意思表示があれば格別、統制額の修正の告示があつたからといつて、右統制額が当該賃貸借契約の賃料に何ら影響しない。
事件番号: 昭和32(オ)1016 / 裁判年月日: 昭和35年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が増築や付加工事を禁ずる特約に違反した場合、賃貸人が数次にわたり賃料を増額改訂した事実があるからといって直ちに解除権を放棄したとはみなされず、信頼関係を破壊する程度の違反がある限り解除は有効である。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)は、賃貸人(被上告人)との間で増改築を禁止する特約を付して…