一 異議決定庁が宥恕すべき事由がないのに、期間経過後の異議申立を受理して実体的判断をしたという違法は、異議決定を当然無効ならしめる瑕疵ではない。 二 行政処分の無効確認請求事件において、該処分の瑕疵が取消原因に過ぎないものであれば、右処分が無効でないとする判決の理由説示に欠くるところがあつても、これをもつて民訴第三九五条第一項第六号の理由不備とはいえない。
一 異議決定庁が宥恕すべき事由がないのに、期間経過後の異議申立を受理して実体的判断をしたという違法は、異議決定の無効原因となるか 二 判決の理由不備にあたらないとされた事例
自作農創設特別措置法7条,訴願法8条3項,行政事件訴訟特例法1条,民訴法395条1項6号
判旨
不服申立期間を徒過した不適法な異議申立てに対し、裁決庁が実体的判断を下したとしても、その瑕疵は当該処分を当然無効ならしめるものではない。
問題の所在(論点)
法定の不服申立期間を徒過した不適法な異議申立てにつき、裁決庁が実体的な判断を下してなした取消処分は、当然無効となるか。
規範
行政処分に対する不服申立期間は、行政救済の迅速化と法的安定性を図るための期間制限である。しかし、裁決庁が宥恕すべき事由がないのに法定期間経過後の不適法な異議申立てを受理し、実体的な判断(取消処分等)を行ったとしても、その手続上の違法は当該処分を当然無効ならしめるほどの重大な瑕疵にはあたらない。
重要事実
補助参加人Cは、自作農創設特別措置法に基づく農地買収計画に対し、法定の異議申立期間を50日余り経過した後に異議を申し立てた。被上告人(農業委員会)は、この期間徒過を宥恕して実体審査を行い、当該買収計画の取消処分を行った。これに対し、本来であれば買収により農地の売渡しを受けるべき立場にあった上告人が、期間徒過の異議申立てに基づく取消処分は無効であると主張して、その無効確認を求めた事案である。
事件番号: 昭和33(オ)5 / 裁判年月日: 昭和36年3月24日 / 結論: 棄却
買収計画の縦覧期間が一日不足していたということだけでは、右計画に基く買収処分は当然無効となるものではない。
あてはめ
本件において、補助参加人Cが計画の樹立自体を知らなかったという事情は、期間徒過の正当な宥恕事由(無理からぬ事情)とは認めがたい。しかし、異議裁決庁が手続上の要件を満たさない不服申立てを誤って受理し、実体的判断を行ったという事実は、行政手続の形式的瑕疵に留まる。このような瑕疵は、行政処分の効力を当然に否定しなければならないほどの重大な違法とはいえず、公定力により有効なものとして取り扱われるべきである。
結論
不服申立期間徒過の瑕疵を含む取消処分であっても、当然無効とはならず、本件取消処分は有効である。
実務上の射程
行政処分の「無効」と「取消し」を区別する文脈で、手続的瑕疵が当然無効原因となるか否かの判断基準として機能する。特に、不服申立期間の徒過を見逃した裁決の効力を争う際に、客観的に重大かつ明白な瑕疵といえるかどうかの検討において参照されるべき判例である。
事件番号: 昭和33(オ)91 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消事由にすぎない瑕疵がある場合であっても、その瑕疵が処分を当然無効ならしめるほどの重大かつ明白なものでない限り、当該処分は当然には無効とならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収処分に以下の無効原因があると主張した。(1)県係員の虚偽指示に基づく買収計画、(2)異議却下時の農地委…
事件番号: 昭和35(オ)1426 / 裁判年月日: 昭和37年9月7日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画後一〇年以上経過して行われた買収処分も必ずしも無効とはいえない。 二 農地買収を不法行為として損害賠償を請求するについての時効期間の起算日は賠償を請求し得べき事実を知つた日と解すべきである。
事件番号: 昭和29(オ)767 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に相手方の誤認や手続上の瑕疵がある場合でも、処分の存在を認識し得た者が不服申立期間を徒過したときは、その瑕疵が当然無効と解すべき重大かつ明白なものでない限り、処分の効力は確定する。 第1 事案の概要:上告人の亡母Dの所有であった農地を、Dの死亡により上告人が相続したが、登記簿上の名義はDの…
事件番号: 昭和35(オ)16 / 裁判年月日: 昭和36年2月21日 / 結論: 棄却
行政処分に対し適法な訴願が提起された後、行政事件訴訟特例法第二条但書の規定により訴願の裁決を経ないで提起された右処分の取消訴訟は、出訴期間が進行を開始する前の状態において提起された適法な訴と解すべきである。