個人の資産再評価差額を零とする審査決定のみの取消を求める法律上の利益はない。
個人の資産再評価差額を零とした審査決定のみの取消を求める利益の有無。
資産再評価法65条,資産再評価法72条,資産再評価法75条,行政事件訴訟特例法1条,所得税法(昭和28年法律173号による改正前)10条の5
判旨
再評価税納税義務を免除する趣旨の処分は、納税者の権利利益を侵害するものではないため、再評価額の増額のみを求めて当該処分の取消しを訴求する法律上の利益は認められない。
問題の所在(論点)
再評価税納税義務を免除する趣旨の処分について、将来の所得税額等に影響を及ぼす可能性があることを理由に、再評価額の増額(処分の取消し)を求める訴えの利益が認められるか。
規範
行政事件訴訟法上の「訴えの利益」が認められるためには、当該処分によって自己の権利や法律上の利益が侵害されていることが必要である。処分の結果、義務の不存在が宣言され、実質的に利益を享受している状態にある場合、その前提となる算定額の不服を理由に処分の取消しを求めることは、訴えの利益を欠く。
重要事実
上告人の申告に対し、税務署長が再評価差額を零とする決定(再評価税納税義務の不存在の宣言)を行った。これに対し上告人は、再評価額が低く見積もられたことで、将来的な譲渡所得を含む総所得金額の算定において不利になる(所得金額が多額になる)と主張し、当該審査決定の取消しを求めて提訴した。
事件番号: 昭和33(オ)691 / 裁判年月日: 昭和36年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】更正決定の理由附記欠如は当然無効事由ではなく、取消事由に過ぎない。また、更正決定の取消しを前提とする過納金還付請求訴訟において、当該決定が不可争力を生じている場合、裁判所はその当然無効といえる事情がない限り、公定力に基づき当該決定を有効なものとして取り扱わなければならない。 第1 事案の概要:上告…
あてはめ
本件税務署長の処分は、再評価差額を零とし、上告人の再評価税納税義務が存在しないことを宣言するものである。これは上告人に対し義務を課すものではなく、その権利や利益を直接侵害するものとはいえない。上告人が懸念する「所得金額を多額ならしめる」という不利益は、後発的な所得税等の決定処分の段階で生じる問題であり、当該所得金額に関する処分につき争訟を提起すべき事柄である。したがって、本件処分自体を争う必要性はない。
結論
本件訴えは法律上の利益を欠くため、却下されるべきである。上告を棄却する。
実務上の射程
特定の税目における免除的処分が他の税目の算定根拠に影響する場合でも、当該免除処分自体に訴えの利益は認められない。司法試験においては、処分性や訴えの利益の検討において、「直接的な権利侵害」の有無を判断する際の基準として、または後続の処分で争うべき「紛争の成熟性」の観点からの議論に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和35年2月23日 / 結論: 棄却
税務署長がした所得金額の更正の減額訂正は、所得税法(昭和二四年法律第七六号による改正前)第四六条第四項の更正ではない。
事件番号: 昭和35(オ)437 / 裁判年月日: 昭和36年10月13日 / 結論: 棄却
一 所得税法第九条第一項第八号にいう収入金額とは、譲渡資産の客観的な価額を指すものではなく、現実の収入金額を指すものと解すべきである。 二 譲渡資産上の抵当権を抹消するため、第三者の債務を弁済しても、その費用は、所得税法第一一条の四の雑損にあたらない。 三 譲渡資産上の抵当権を抹消するため、第三者の債務を弁済しても、そ…
事件番号: 昭和37(オ)255 / 裁判年月日: 昭和41年6月24日 / 結論: 破棄差戻
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和二四年法律第二一四号による改正前)第一〇条により他社の株式取得の制限を受けている事業会社が、その所有に係る他社の株式についての増資新株を自ら取得できないため、自社の重役等個人に無償で取得させた場合において、同社になんら利得をもたらさないことを理由として、右行為に基づ…
事件番号: 昭和35(オ)180 / 裁判年月日: 昭和36年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】役員報酬の損金算入の適否を判断するにあたっては、役員の勤務実態、類似営業を行う法人の報酬水準、および会社規模等を総合的に勘案し、客観的な妥当性に基づいて決定すべきである。 第1 事案の概要:上告会社(資本金100万円以下)は、代表取締役Dに対し報酬を支払っていた。京橋税務署長は、Dの実際の勤務状態…