一 共産党の同調者であることを自認したことは、民訴法第二五七条にいう事実を自白したものと解すべきである。 二 石炭産業は、昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡にいわゆる「その他の重要産業」に該当する。
一 共産党の同調者であることの自認と裁判上の自白 二 石炭産業は、昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡にいわゆる「その他の重要産業」に該当するか
民訴法257条,昭和25年7月18日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡
判旨
占領下において連合国最高司令官の指示に基づいてなされた共産党員等の排除(レッド・パージ)に伴う解雇は、超憲法的規範としての効力を有し、国内の憲法、法令、就業規則等に優先して適用される。したがって、当該解雇は国内法の規定や手続にかかわらず当然に有効である。
問題の所在(論点)
連合国最高司令官の指示に基づき、特定の政治的思想信条(共産主義)を理由になされた解雇(レッド・パージ)に対し、憲法上の基本権(21条、28条等)や公序良俗、解雇権濫用の法理を適用してその効力を否定することができるか。
規範
連合国最高司令官が発する一切の命令および指示は、超憲法的規範としての効力を有する。わが国の憲法および法令は、右命令または指示に抵触する限りにおいてその適用を排除される。したがって、右指示に基づく解雇は、憲法、法令、公序良俗、解雇権濫用、または就業規則所定の手続に違反するか否かを論ずるまでもなく有効となる。
重要事実
重要産業である石炭採掘販売業を営む被上告会社は、占領軍最高司令官の指示に基づき、煽動的な共産党員およびその支持者を企業から排除するため、就業規則所定の解雇基準を定めた。上告人ら(共産党員または支持者であることを自認)が当該基準に該当するとして、会社は上告人らを解雇した。上告人らは、本件解雇が憲法や就業規則、公序良俗に反し無効であると主張して争った。
あてはめ
本件解雇は、連合国最高司令官が重要産業における破壊的分子の排除を求めた指示に基づき、その適用基準として策定された就業規則に則ってなされたものである。最高司令官の指示は超憲法的規範であり、国内法規に優先する以上、憲法21条、28条の保障や、公序良俗違反、解雇権濫用といった国内法上の制限は適用されない。上告人らが共産党員または支持者として解雇基準に該当すると認められる以上、国内法上の手続等の違法を検討する余地なく、解雇は有効と解される。
結論
本件解雇は、超憲法的規範である連合国最高司令官の指示に基づくものであるから、国内法や就業規則の手続に違反するかを問わず有効である。
実務上の射程
占領下の特殊な法的状況(ポツダム宣言受諾に伴う連合国軍の権限)に関する判例であり、現在の法秩序下で政治的思想信条のみを理由に解雇を行うことは、原則として憲法19条や公序良俗(民法90条)、労働契約法16条により許されない。本判例は、連合国軍の指示が当時の国内法に優先したという歴史的・特殊な文脈における「法規の適用優先順位」を示すものとして理解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)686 / 裁判年月日: 昭和40年12月17日 / 結論: 棄却
一 ポツダム宣言を受諾した日本国としては、連合国最高司令官の指示がポツダム宣言および降伏文書に違反して有効であるかどうかを審査判断する立場にない。 二 昭和二五年七月一八日付連合国最高司令官マツクアーサー元帥より内閣総理大臣にあてた書簡は、公共的報道機関のみならずその他の重要産業の経営者に対し企業から共産党員およびその…