堅固の建物以外の建物の所有を目的とし、期間を二〇年とする借地権は、右期間満了前は、地上建物が朽廃しても消滅しない。
地上建物の朽廃と借地権の存続。
借地法2条2項,借地法2条1項但書
判旨
賃貸人たる地位の移転があった場合、新賃貸人は旧賃貸人が承諾した状態を引き継ぐため、賃借人は改めて新賃貸人の承諾を得る必要はない。また、借地権の存続期間を定めた場合、期間満了前に建物が朽廃しても借地権は当然には消滅しない。
問題の所在(論点)
1. 賃貸人の地位が譲渡された場合、前主による建物建築の承諾は後主(譲受人)に対抗できるか。 2. 存続期間を定めた借地権において、期間満了前の建物の朽廃は借地権の消滅原因となるか。
規範
1. 賃貸人たる地位の承継人は、前主が賃借人に対して行った承諾や合意を、そのまま承諾した状態の下で地位を引き継ぐ。したがって、承諾済みの事項について承継人から改めて個別の承諾を得る必要はない。 2. 契約によって堅固でない建物の所有を目的とする借地権の存続期間を定めた場合(旧借地法2条2項)、期間満了前に建物が朽廃しても、借地権はそのことのみによって当然に消滅するものではない。
重要事実
賃借人Dは昭和12年、土地所有者Eとの間で期間20年の賃貸借契約を締結した。その後、Eの相続人FはDに対し、既存のバラックを取り壊して本建築の建物を建てることを承諾した。その後、Fは本件土地を上告人に売却し、賃貸人の地位も譲渡した。Dは上告人から改めて承諾を得ることなく建物を建築した。上告人は、期間満了前に建物が朽廃したことによる借地権の消滅、および無断建築等を理由に土地明け渡しを求めた。
事件番号: 昭和37(オ)295 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、賃貸人の承諾があれば第三者が借地権を取得し得る地位にあることを前提とするため、借地権消滅後に建物を取得した者には認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dの地上建物が公売に付され、訴外Eが買得した。土地賃貸人Fは、Dに対し借地権の無…
あてはめ
1. 上告人は前主Fから賃貸人の地位を承継したが、FがDに対して建物建築を承諾していた以上、上告人はその承諾があった状態の地位を引き継ぐ。したがって、Dが改めて上告人の承諾を得る必要はなく、義務違反(無断築造)は認められない。 2. 本件借地権は期間を昭和32年3月末日までと定めており(旧借地法2条2項)、たとえ期間満了前に建物が朽廃したとしても、定めた期間までは権利が存続する。したがって、朽廃による当然消滅は認められない。
結論
上告人の請求は認められない。賃借人は新賃貸人に対して前主の承諾を主張でき、また期間の定めがある以上、朽廃による終了も否定される。
実務上の射程
賃貸人交代時の権利義務の承継範囲を示す基本判例である。答案上は、賃貸人たる地位の移転に伴う「合意の承継」の論点において、賃借人の期待保護の観点から引用する。また、旧法下の事案ではあるが、特約による期間設定がある場合の朽廃の効力を否定する際にも参照される。
事件番号: 昭和37(オ)294 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和30(オ)750 / 裁判年月日: 昭和33年10月17日 / 結論: 棄却
木造建物が、その柱、桁、屋根の小屋組などの要部に多少の腐蝕個所がみられても、こちらの部分の構造にもとずく自らの力で屋根を支えて独立に地上に存立し、内部への出入に危険を感じさせることもないなど原審認定の状況(原判決理由参照)にあるときは、右建物は未だ借地法第一七条第一項但書にいう朽廃の程度に達しないものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)943 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
賃借地上の賃借人所有の家屋が第三者に無断譲渡された後に右家屋が他に賃貸された場合において、家屋買取請求権が行使されたときは、土地所有者は、右家屋の所有権を取得すると共に、家屋賃借人に対する賃貸人の地位をも継承する。
事件番号: 昭和35(オ)824 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
賃借地上に建物を所有する者より当該建物を賃借している者は、当該建物に居住することによつて敷地を占有する権限を右土地所有者に対して有する。