夫婦の性生活において、夫の態度が常態でなく、約一年半の同居期間中終始かわらない状況にあり、また妻が、夫は睾丸を切除したけれど夫婦生活には大して影響がないとの医師の言を信じて結婚したこと等原審認定の諸事情(原判決参照)があるときは、民法第七七〇条第一項五号にいう婚姻を継続し難い重大な事由があるものと認められる。
婚姻を継続し難い重大な事由があると認められた事例
民法770条1項5号
判旨
夫婦の性生活は婚姻の基本となる重要事項であり、配偶者の性交態度が常態を逸し、忍び難い嫌悪感を生じさせて婚姻関係が修復不能な状態に至った場合は、民法770条1項5号の事由に該当する。
問題の所在(論点)
性生活上の不調や異常な性交態度は、民法770条1項5号にいう「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するか。また、その判断において回復の能否等の認定は不可欠か。
規範
夫婦の性生活は婚姻の基本となるべき重要事項である。身体的欠陥そのものではなく、性生活における態度や状況等、諸般の事情を総合考慮し、婚姻生活を継続し難い程度の破綻が生じているかを判断する。この際、性交能力の治療回復の能否や当事者の努力に関する認定が必須となるわけではない。
重要事実
上告人(夫)と被上告人(妻)は、上告人が副睾丸結核のため睾丸を切除していることを承知の上で結婚した。医師からは夫婦生活に支障はないと説明されていたが、実際の性生活において上告人の態度は常態を逸したものであった。妻は当初、事態の好転を期待して約1年半婚姻生活を続けたが、態度は一向に緩和されず、強い嫌悪感を抱いて実家に帰り、離婚を求めて提訴した。
あてはめ
上告人の性交態度は常態ではなく、若い女性である被上告人にとって忍び難いものであった。結婚当初から別居に至るまで終始改善されず、緩和の期待も裏切られたといえる。睾丸切除という身体的事実や、それに基づく性生活への影響を重視した被上告人の主観的嫌悪感は、諸般の事情に照らせば無理からぬものである。したがって、客観的にも婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態に至っていると解される。
結論
本件の性生活に関する事実は、民法770条1項5号の事由に該当する。上告人の性交能力の治療回復可能性等について個別の認定がなくても、離婚請求は認められる。
実務上の射程
770条1項5号の該当性を判断する際、性生活の問題が重要な考慮要素となることを明示した。身体的な性機能不全そのものよりも、それによって生じる具体的態様や相手方の精神的苦痛、修復可能性の有無を重視する実務の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和33(オ)144 / 裁判年月日: 昭和33年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法770条1項5号にいう「婚姻を継続し難い重大な事由」は、夫婦の一方の有責性を要件とするものではなく、夫婦双方の責に帰すべき場合や、いずれの責にも帰すべからざる場合も含まれる。 第1 事案の概要:控訴人(妻)が実家に帰り、上告人(夫)との別居が開始された。上告人は、頑なな性格を強め、事ごとに控訴…
事件番号: 昭和31(オ)67 / 裁判年月日: 昭和35年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法770条1項5号の婚姻を継続しがたい重大な事由は客観的に判断すべきであり、当事者の一方が主観的に愛情を喪失したとしても直ちに同事由には当たらない。また、過去の不適切な言動があっても、その後に同棲生活を継続し宥恕したと認められる事情があれば、当該事由は否定される。 第1 事案の概要:上告人(夫)…