不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきである。
時効による不動産の所有権取得とその対抗要件。
民法162条,民法177条
判旨
不動産の時効完成後に登記を経由した第三者がある場合でも、その登記後さらに時効取得に必要な期間占有を継続し時効が完成したときは、時効取得者は当該第三者に対し、登記なくして時効による権利取得を対抗できる。
問題の所在(論点)
不動産の取得時効完成後に登記を経由した第三者が現れた場合、当該登記後に再度時効期間が経過したときには、再度の時効完成を理由として当該第三者に登記なくして所有権を対抗できるか。いわゆる「時効完成後の第三者と再度の時効取得」の可否が問題となる。
規範
1. 時効完成後の第三者に対しては、登記がなければ時効取得を対抗できない。2. しかし、第三者の登記後に再度時効期間が経過して時効が完成した場合には、時効取得者はその第三者に対し、登記なくして時効取得を対抗できる。この場合、第三者は時効完成時の当事者に該当し、登記を具備すべき「第三者」には当たらないためである。
重要事実
本件山林の所有者a部落に対し、被上告人の前主である第一次D神社が明治38年から10年間の占有により大正4年に取得時効を完成させたが、登記は未了であった。その後、大正15年8月26日に上告人がa部落から当該山林の寄附を受けて登記を経由した。しかし、第一次D神社は当該登記後も引き続き占有を継続し、昭和11年8月26日に再度10年間の時効期間を満了した。被上告人は第一次D神社の包括承継人として、上告人に対し所有権を主張した。
事件番号: 昭和32(オ)880 / 裁判年月日: 昭和34年2月12日 / 結論: 棄却
一 不動産につき実質上所有権を有せず、登記簿上所有者として表示されているにすぎない者は、実体上の所有権を取得した者に対して、登記の欠缺を主張することはできない。 二 真正なる不動産の所有者は、所有権に基き、登記簿上の所有名義人に対し、所有権移転登記を請求することができる。
あてはめ
上告人は大正15年に登記を経由しており、第一次D神社の最初の時効完成(大正4年)との関係では「時効完成後の第三者」に該当する。しかし、第一次D神社は上告人の登記後である大正15年から昭和11年までさらに10年間、所有の意思をもって平穏、公然、善意、無過失に占有を継続している。この再度の時効期間の経過により、上告人は時効完成当時の所有者、すなわち時効による権利変動の直接の相手方の地位に立つことになる。したがって、上告人と被上告人の承継前主との間には対抗関係(民法177条)は生じず、登記なくして時効取得を主張できる。
結論
時効完成後に登記を経由した第三者に対しても、その登記後に再度取得時効が完成した場合には、登記なくして時効取得をもってこれに対抗できる。本件においても被上告人の主張は認められる。
実務上の射程
本判決は、時効完成後の第三者が現れた場合であっても、その後の継続占有によって再度時効が完成すれば、その第三者を「時効完成時の当事者」として扱う法理(再度の取得時効)を確立した。実務上、時効完成後の第三者に対して対抗できない場合でも、さらに期間が経過していないかを検討する際の重要な根拠となる。
事件番号: 昭和30(オ)869 / 裁判年月日: 昭和35年1月22日 / 結論: 棄却
乙名義で不動産を競落した甲から所有権を取得した丙は、乙に対して移転登記の請求をすることができる。
事件番号: 昭和34(オ)333 / 裁判年月日: 昭和36年9月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、後買主が登記を具備した場合、特段の事情がない限り、売主の前買主に対する登記移転義務は履行不能となる。また、中間省略登記がなされた場合であっても、それが実体上の権利関係に合致するものである限り、その有効性を否定することはできず、民法177条の対抗関係が維持される。 第1 事…
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。
事件番号: 昭和40(オ)353 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 破棄差戻
不動産を買い受け所有権に基づいてこれを占有する買主は、売主との関係においても、自己の占有を理由として右不動産につき時効による所有権の取得を主張することができる。