損害保険契約にも民法第五四一条の適用があると解すべきである。
損害保険契約に民法第五四一条の適用があるか。
民法541条
判旨
保険料不払による火災保険契約の解除には原則として遡及効が認められ、保険料領収前は責任を負わない旨の約款がある場合、解除時までの既経過保険料の支払義務も消滅する。
問題の所在(論点)
保険料不払を理由とする損害保険契約の解除に遡及効が認められるか。特に、保険料領収まで責任を負わない旨の約款がある場合に、解除までの既経過保険料を請求できるかが問題となる。
規範
損害保険契約において、保険者は保険契約者の保険料不払を理由に、民法541条に従い契約を解除することができる。商法上の特種の解除規定(告知義務違反等)が将来効を定めているのは、各条所定の特殊な事由がある場合に限定されるものであり、一般の債務不履行による解除に遡及効を否定する保険法の一般原則は存在しない。また、保険料領収前は損害填補責任を負わない旨の約款(責任開始期に関する特約)がある場合、保険者は解除までの間も危険負担義務を履行していないため、解除の遡及効を認めても契約の性質に反しない。
重要事実
火災保険会社(上告人)は、被保険者(被上告人)との間で、保険料領収前は損害を填補しない旨の約款に基づき火災保険契約を締結した。保険料支払につき3ヶ月の猶予を与えていたが、被保険者が催告後も支払わなかったため、保険会社は条件付契約解除の意思表示をした。その後、保険会社は解除によって失効した本件契約に基づき、解除までの既経過期間に対応する保険料の支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件約款2条2項は、保険料の支払を受けるまで保険責任は開始しない趣旨と解される。この場合、保険者は契約締結から解除までの間、一度も保険責任を負担しておらず、危険負担義務を履行していたとはいえない。したがって、継続的契約であることを理由に将来効のみを認める必要はなく、民法の一般原則通り解除の遡及効が認められる。本件では、保険会社が自ら解除の意思表示を行い契約を遡及的に消滅させた以上、もはや契約上の保険料支払債務の履行を求めることはできない。
結論
保険料不払による解除には遡及効が認められるため、既経過期間の保険料請求は認められない。
実務上の射程
保険料不払による解除の効力(遡及効の有無)に関するリーディングケースである。実務上、特約により責任開始前である場合には遡及効が認められやすいが、保険者が既に危険を負担している場合には、契約の継続的性質から将来効にとどまると解される余地がある点に留意が必要である。
事件番号: 昭和32(オ)782 / 裁判年月日: 昭和36年3月16日 / 結論: 棄却
建物が二重に譲渡され、一方の譲受人が登記を経由し、他方の譲受人は、無効な登記にもとづく登記を有するにすぎないときは、右建物所有者として、その建物を目的とする火災保険契約を締結するについて、被保険利益を有しない。