停止条件附代物弁済契約をなしたのに、売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記が経由された場合、後日停止条件が成就して仮登記の目的たる不動産所有権が仮登記権利者に移転したときは、仮登記権利者は、仮登記義務者に対し右仮登記の本登記手続を請求しうる。
停止条件附代物弁済契約に基いてなされた売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記の効力。
不動産登記法2条2号,不動産登記法55条
判旨
所有権移転請求権保全の仮登記は、特定の不動産の所有権移転請求権を保全するための仮登記としての同一性を害しない限り、登記原因に実質的権利関係と若干の相違があっても無効とはならない。
問題の所在(論点)
不動産登記法上、仮登記に記載された登記原因(売買予約等)と実質的な権利関係(代物弁済契約等)が異なる場合に、当該仮登記が無効となるか、あるいは有効として本登記の順位保全効力を認めることができるかが問題となる。
規範
仮登記は、本登記の順位を保全することを目的とするものであり、権利関係自体の公示を主目的とするものではない。したがって、仮登記された権利関係と実質上の権利関係との間に若干の食い違いがあっても、当該仮登記が特定の不動産の所有権移転請求権を保全するための仮登記として同一性を害するものと認められない限り、直ちにこれを無効とすべきではない。この場合、権利者は更正登記を経て、または更正登記を併合請求せずに、直接仮登記に基づき本登記を請求できる。
重要事実
不動産の所有権移転請求権を保全するため、実質的な原因は「停止条件付代物弁済契約」であったが、申請書には「売買予約」と記載して仮登記がなされた。その後、停止条件が成就したため、仮登記権利者が仮登記に基づき所有権移転の本登記を求めたところ、登記原因の不一致を理由に当該仮登記の効力が争われた。
事件番号: 昭和57(オ)578 / 裁判年月日: 昭和60年11月26日 / 結論: 棄却
仮登記担保権の設定された不動産の第三取得者は、当該仮登記担保権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
あてはめ
本件仮登記は、原因が「代物弁済」であるべきところ「売買予約」と記載されたが、特定の不動産に関する所有権移転請求権を保全するという目的においては共通している。原因の記載に相違はあるものの、請求権の同一性を害するほどの重大な齟齬とは認められない。したがって、実質的な停止条件成就により所有権が移転した以上、仮登記の順位保全効力は維持されており、権利者はこれに基づき有効に本登記を請求し得る。記載の不一致は更正登記等で修正可能な技術的問題に留まり、仮登記を無効とする理由にはならない。
結論
登記原因に若干の食い違いがあっても、所有権移転請求権の同一性を害しない限り仮登記は有効である。したがって、本件仮登記に基づく本登記請求は認められる。
実務上の射程
仮登記原因の流用(いわゆる仮登記の流用)の有効性に関する議論の基礎となる判例である。答案上は、登記の有効性が争われる場面で「実体関係との合致」を論ずる際、仮登記については順位保全という目的から「同一性」を基準に緩和して考える論拠として活用する。原因の不一致があっても更正の対象になり得れば有効、というロジックで用いる。
事件番号: 昭和31(オ)172 / 裁判年月日: 昭和33年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記は物権変動の対抗要件にすぎず、第三者が登記名義を有しない実体上の所有者を認め、登記名義人への権利帰属を否認することは妨げられない。また、未登記不動産の譲受人が直接自己名義で行った所有権保存登記は、現在の権利状態と符合する限り有効である。 第1 事案の概要:本件土地は実質的にA1の所有であ…
事件番号: 昭和42(オ)427 / 裁判年月日: 昭和42年12月19日 / 結論: 棄却
仮登記原因の疎明の有無は、仮登記仮処分命令の効力に消長をきたすものではない。
事件番号: 昭和43(オ)356 / 裁判年月日: 昭和43年9月20日 / 結論: 棄却
一、土地の売買契約締結に際して、目的土地の一部を第三者が占有している場合に、売主が、右第三者の占有は権原に基づかないもので少なくとも一年位のうち明渡を受けて買主に目的土地を明け渡す旨言明したため、買主においてこれを信用し、右第三者使用部分の明渡が完了すると同時に残代金を支払うことを約したときには、右残代金の支払時期につ…
事件番号: 昭和38(オ)1137 / 裁判年月日: 昭和40年3月26日 / 結論: 棄却
甲乙の共有にかかる家屋について、甲が乙の作成名義を偽造して、売買による前所有権の移転登記をした場合において、甲の共有持分に関しては、右偽造による登記の無効を生ずることはない。