戸籍上の父が死亡した後に、戸籍上の母を申立人、子を相手方として、右戸籍上の亡夫と子との間に親子関係が存在しないことを確認する旨の家事審判法第二三条の審判がなされた場合、その審判はいわゆる対世的効力を有しない。
死者との間に親子関係が存在しないことを確認する旨の家事審判法第二三条に基づく審判の効力。
家事審判法23条,家事審判法25条,人事訴訟法32条,人事訴訟法18条
判旨
家事審判法23条(現行家事事件手続法277条等)に基づく合意に相当する審判の対世的効力は、存否が争われている身分関係の主体となる者双方が当事者として参加していない場合には認められない。
問題の所在(論点)
身分関係の主体の一方が死亡しており、生存する他方当事者と第三者との間で成立した「合意に相当する審判」に、当該死亡した者との関係における身分関係の存否を確定する対世的効力が認められるか(家事審判法23条、現・家事事件手続法277条)。
規範
家事審判法23条(合意に相当する審判)は、身分関係の存否を当事者間の合意に基づき確認するものである。その性質上、対世的効力(人事訴訟法32条、18条類推)が認められるためには、存否が確認される身分関係の主体となる者双方が当事者として手続に参加し、その当事者間に合意が成立していることを要する。
重要事実
亡Dの相続に関し、被上告人BとEとの間で、D・B夫妻とEとの間に親子関係が存在しないことを確認する旨の審判(家事審判法23条)が確定した。これに基づき、真正相続人であると主張する被上告人らが、Eから抵当権の設定を受けた上告人に対し、Eの無権利を理由に抵当権設定登記の抹消を求めた。原審は、上記審判の対世的効力(既判力)により、EとDの親子関係は否定されると判断した。
あてはめ
本件審判のうち、亡DとEとの間に親子関係(父子関係)が存在しないことを確認した部分は、その身分関係の主体の一方である亡Dが手続の当事者となっていない。したがって、D・E間の親子関係を対世的に否定する効力を有すると解することはできず、上告人(第三者)との関係で当然に親子関係が否定されるものではない。
結論
亡DとEとの親子関係を否定する審判の対世的効力は認められない。原審が対世的効力を認めて被上告人らの請求を認容した判断には法令の解釈を誤った違法があるため、原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
特定の親族間での合意により他者の身分関係を確定させることの危険性を排除する趣旨である。答案上は、身分関係の存否が争点となる場合に、確定審判や判決の既判力が及ぶ範囲(対世効の限界)を論じる際の根拠として活用する。特に当事者が死亡している場合の審判の限界を示す重要な準則となる。
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一 農地の贈与についての知事の許可は、贈与の成立前になされることを要せず、許可のあつたときから右贈与は効力を生ずるものであり、許可当時贈与者が既に死亡していても、その効力の発生を妨げない。 二 受贈者に対する土地所有権移転登記が、死亡している贈与者名義でなされた場合であつても、右登記が死亡者およびその相続人の意志に反し…