一 不動産売買予約上の権利を仮登記によつて保全した場合に、右予約上の権利の譲渡を予約義務者その他の第三者に対抗するためには、仮登記に権利移転の附記登記をすれば足り、債権譲渡の対抗要件を具備する心要はないと解すべきである。 二 右の場合において、仮登記後附記登記前に第三者により仮差押の登記がなされたとしても、その後右不動産につき売買予約完結の意思表示がなされ、これに基いて所有権移転の本登記がなされた以上、仮差押債権者はその仮差押をもつて所有権取得者に対抗することはできない。
一 仮登記によつて保全された不動産売買予約上の権利の譲渡と対抗要件 二 売買予約上の権利の譲渡以前になされた仮差押の効力
民法556条,民法467条,不動産登記法2条,不動産登記法7条
判旨
不動産売買予約上の権利(予約完結権)の譲渡を第三者に対抗するには、仮登記に対する権利移転の附記登記をなせば足り、債権譲渡の対抗要件(通知・承諾)を具備する必要はない。
問題の所在(論点)
不動産売買予約上の権利(予約完結権)の譲渡について、債権譲渡の対抗要件(通知・承諾)を具備せずに仮登記の附記登記のみで第三者に対抗できるか。また、仮登記後・附記登記前になされた仮差押登記に対して優先しうるか。
規範
不動産売買予約上の権利を不動産登記法上の仮登記により保全した場合、当該権利の譲渡を義務者や第三者に対抗するためには、仮登記に対する権利移転の附記登記を具備すれば足りる。この附記登記がなされた場合、その順位は主登記たる仮登記の順位によるため、本登記がなされればその効力は仮登記の時点に遡及し、仮登記後附記登記前になされた第三者の登記に優先する。
重要事実
不動産所有者DがEとの間で売買予約を締結し、Eは所有権移転請求権保全の仮登記(本件仮登記)を経由した。その後、被上告人がEから本件予約完結権を譲り受けたが、附記登記未了の間に、上告人がDに対する債権に基づき本件不動産を仮差押え、その登記を経由した。被上告人はその後に附記登記を完了させ、予約完結権を行使して本登記を備えた。上告人は、予約完結権の譲渡につき債権譲渡の対抗要件(民法467条)が欠けていること等を理由に、自らの優先権を主張した。
あてはめ
予約完結権の譲渡は、仮登記に対する権利移転の附記登記によって公示される。本件において、被上告人は仮登記の附記登記を備えており、その順位は主登記である本件仮登記の順位(昭和30年1月21日)に依存する。上告人の仮差押登記(同年8月2日)は本件仮登記より後になされている。したがって、被上告人が予約完結権を行使して本登記を了した以上、その所有権取得は仮登記の順位により保全され、後位にある上告人の仮差押えによる制約を排除できる。
結論
予約完結権の譲渡を対抗するには附記登記で足り、債権譲渡の対抗要件は不要である。仮登記後に現れた仮差押債権者に対し、被上告人は所有権取得を対抗できる。
実務上の射程
仮登記された請求権の譲渡の対抗要件を確定した重要判例である。答案上は、仮登記の流用や二重譲渡の場面ではなく、純粋な「権利譲渡の公示方法」として、債権譲渡(民法467条)と登記(不動産登記法)の優劣が問題となる文脈で使用する。
事件番号: 昭和32(オ)1140 / 裁判年月日: 昭和34年8月28日 / 結論: 棄却
有体動産に対する占有権は、差押によつて失われるものではないからその動産の占有改定による引渡は、差押の存続する間、差押債権者に対抗できないにとどまるものと解すべきである。