公職選挙法第一七三条による候補者氏名および党派別の掲示で、同法第一七五条に基いて県選挙管理委員会が定めた規程に反し、候補者一名について振仮名を附さなかつた違法は、選挙無効の原因になり得る。
公職選挙法第一七三条による候補者氏名および党派別の掲示で同法第一七五条に基く県選挙管理委員会規程に反し候補者一名について振仮名を附さなかつた違法と選挙の効力。
公職選挙法173条,公職選挙法175条,公職選挙法205条1項
判旨
選挙管理委員会が定めた「候補者氏名に振仮名を附す」規定は訓示規定ではなく公職選挙法205条1項の「選挙の規定」に該当し、これに違反した事実があり、かつ候補者間の得票差が僅少であれば、選挙の結果に異動を及ぼす可能性があるとして選挙は無効となる。
問題の所在(論点)
選挙管理委員会の定める振仮名掲示規定の違反が、公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定」に違反し、かつ「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」がある場合に該当するか。
規範
1. 選挙管理委員会が法に基づき定めた告示・掲示等に関する詳細な規律は、一般選挙人に候補者の氏名を周知させるための「選挙の規定」(公職選挙法205条1項)に含まれる。2. 「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」とは、当該規定違反がなければ当選人の当落に異なった結果を生じた可能性があることを指す。この判断にあたっては、地域の実情、投票の性質、得票差等の諸般の事情を総合考慮する。
重要事実
町村議会議員選挙において、選管の規程では「氏名に平仮名で振仮名を附すること」とされていたが、掲示板において被上告人1名にのみ振仮名が附されていなかった。当該選挙区は農山村地帯で、仮名書投票の比率が相当に高く、仮名でなければ文字の識別が困難な選挙人が相当多数存在した。また、当選者と落選者である被上告人との得票差は著しく僅少であった。
あてはめ
まず、振仮名掲示規定は選挙人に候補者を周知させる重要な規定であり、単なる訓示規定ではないため、これに反したことは「選挙の規定」違反にあたる。次に、異動を及ぼすおそれについて、本件地域では教育程度の低い者や仮名書きを必要とする有権者が多数存在し、かつ得票差が僅少であった事実に照らせば、振仮名の欠如によって被上告人の得票に影響が出た可能性は否定できない。立候補の告示や投票所内での適正な掲示といった他の事情を考慮しても、右の可能性を覆すには足りない。
結論
本件規定違反は公職選挙法205条1項の規定に違反し、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものと認められる。したがって、本件選挙は無効である。
実務上の射程
選挙無効訴訟において「選挙の規定」の範囲を広く解認める一方で、「結果に異動を及ぼすおそれ」の判断に際して具体的・個別的事情(地域性や得票差)を重視する実務上の判断枠組みを示した事例として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)577 / 裁判年月日: 昭和33年12月18日 / 結論: 棄却
公職選挙法第二〇九条の二は土地改良区総代選挙に準用がない。
事件番号: 昭和33(オ)1052 / 裁判年月日: 昭和34年4月28日 / 結論: 破棄自判
選挙人名簿対照係席が投票立会人席から見透すことができない投票所の施設は、公職選挙法施行令第三五第一項の趣旨に反するけれども、右対照係が行つた選挙人確認手続に違法の点がないときは、右投票所で行われた選挙を無効とすべきではない。